JRの運賃・料金 ~運賃計算編~

前のページでも申し上げたように、このページの内容は実用的ではない割に難しいため、予めご了承下さい。
このページでは具体的にどんなことを解説していくかというと、「○○駅から○○駅までの運賃はいくらか」を求める方法です。
なお、このページをご覧頂くにあたっては、時刻表(出来ればJR時刻表)をお手元に準備の上、ご覧頂くようお願いします。
また、Suicaエリア内ではICカード乗車券と紙の乗車券で運賃が異なりますが、このページでは紙の乗車券で利用する場合の運賃を示しています。ICカード乗車券の場合は運賃が異なりますのでご注意下さい。
このページではJR時刻表での表記等を用いていますので、それ以外の時刻表ですと表記等が一部異なる場合がありますが、記載内容は同じですので、適宜読み替えて頂ければ支障はありません。
時刻表を持っていない方については、知人などから古い時刻表を譲り受けるか、そんなに高価な物でもないので、お買い求め頂ければと思います。

そもそも運賃はどうやって決まる?

駅に行けばその駅からの運賃が表になって掲示されていますし、○○駅までのきっぷと申し込めば運賃を教えてくれるので、意識したことがない方も多いかと思いますが、運賃は一体どうやって決まるのでしょうか。
すべての区間に個別にJRが運賃を決めている・・・なんてことはもちろんありません。なぜならJRの駅は5,000弱あり、それら全ての組み合わせは天文学的な数となり運賃を決めるのも大変ですし、天文学的な数存在する運賃を全て表示できる手段がないからです。
もったいぶらずにさっさと教えろという声も聞こえてきそうですし、答えを言うと「乗車する区間のキロ数を基準として、JRが用意した運賃表に当てはめて」計算します。
ここで注意して欲しいのは、決して「1kmあたりいくら」という計算にはならないということです。
「遠距離逓減制」といって、長距離を利用すればするほど、1kmあたりの単価が安くなるようになっているのです。
ポイント!
・運賃は乗車するキロ数で決まる
・遠くに行くほど1kmあたりの単価が安くなる(遠距離逓減制)

用語を覚えよう

ここまでも「○○の特例」といった用語が続き、大変だったでしょうが、このページでも用語が沢山出てきます。
正しく理解しておかないと、この先の部分を理解できなくなると思いますので、ここはしっかりとやっておきましょう。

幹線

路線の種類の1つで、時刻表のさくいん地図では黒線で描かれています。

地方交通線

路線の種類の1つで、時刻表のさくいん地図では水色線で描かれています。

本州会社

JR東日本・JR東海・JR西日本の総称です。

三島会社

JR北海道・JR四国・JR九州の総称です。

境界駅

JR各社の管轄エリアの境界となる駅です。

営業キロ

JRの運賃計算の基準となるキロ数の1つです。

換算キロ

地方交通線のみに設定されているキロ数です。

擬制キロ

JR九州・JR四国の地方交通線にのみ設定されているキロ数です。

運賃計算キロ

営業キロ・換算キロ・擬制キロを合計したものです。

基本額

加算額以外の運賃です。

加算額

三島会社と本州会社をまたがって利用する場合に加算する運賃です。

幹線と地方交通線

JRの運賃計算において欠かすことのできない概念の1つとして「幹線」と「地方交通線」があります。
ざっくりというと前者は読んで字の如くJRの路線ネットワークにおいて、幹の部分となる重要な路線で、後者は幹線以外の幹に対して枝に相当する路線でいわゆる「ローカル線」です。
JRの運賃制度ではこの2つは明確に区別されていて、地方交通線の方が幹線よりも割高な運賃が適用されます。
なお、幹線と地方交通線の区分は国鉄時代に行われて以来改定されていないため、1両のワンマン列車が往来するのみの美祢線が幹線だったり、秋田新幹線「こまち」が通る田沢湖線が地方交通線だったりと実態に即していないケースも散見されます。
しかし、実態がどうであれ、運賃を求める基準は「幹線」か「地方交通線」かなので、その辺は「気にしたら負け」ですw
ところで、「新幹線はどうなるんだ?」と思った方、前のページを復習してみて下さい。「新幹線は並行する在来線扱い」ですので、原則は幹線となります。

見分け方

時刻表のさくいん地図を見るのが一番手っ取り早く、黒線が幹線、水色線が地方交通線です。
どうしても時刻表が用意できないという方はインターネット上で調べることもできますが、やはり時刻表をおすすめします。
ポイント!
・幹線より地方交通線の方が運賃が割高
・新幹線は並行する在来線扱い
・幹線・地方交通線の区分は実態に即しない部分も

三島会社と本州会社

三島会社と本州会社という2つの用語ですが、わざわざJR各社を塊にして区別しているのにはちゃんと意味があります。
実は本州会社と三島会社では同じキロ数でも運賃が異なるのです。更にいうと三島会社は3社それぞれに運賃が異なります。

換算キロと擬制キロ

どちらも地方交通線に設定されているキロ数ですが、どのような意味合いで存在し、換算キロと擬制キロがどう違うのかというお話です。
換算キロは本州会社とJR北海道に設定されていて、幹線と地方交通線をまたがって利用する場合にのみ使用します。
一方の擬制キロはJR九州とJR四国の地方交通線に設定されていて、地方交通線を利用するときは幹線にまたがるか否かを問わず、常に擬制キロを使用します。
換算キロも擬制キロも営業キロを割増したもので、地方交通線は幹線よりも高い運賃を設定しないと採算が取れないために導入されている制度です。
両者は制度としてはよく似たものですが、違いが出るのは地方交通線のみを利用する場合で、本州会社とJR北海道では地方交通線のみの場合は換算キロは使用せず営業キロを元に地方交通線用の運賃表に当てはめます。つまり、運賃表の方で割増をしているわけですね。
一方のJR九州、JR四国では地方交通線単独であっても擬制キロを使用し、運賃表は幹線・地方交通線共通となっています。こちらは常にキロ数で割増をする方式というわけですね。
ポイント!
・本州会社とJR北海道は換算キロ、JR九州、JR四国は擬制キロ
・換算キロと擬制キロの違いは地方交通線のみを利用する場合に換算キロの場合は営業キロを使い、擬制キロの場合は擬制キロを使うこと

運賃計算の基礎

運賃計算は「キロ数を出す」→「運賃表に当てはめる」という作業になります。
個々の作業ができるようにならないことには運賃計算はできませんのでまずはそこの解説です。

目的のページを探そう

時刻表は1,000ページを超えるものですので、当てずっぽうに開いたり1枚1枚めくっていくなんてことをしていては日が暮れてしまいます。
そんな時役立つのがさくいん地図です。冒頭の方にあり、地方ごとの路線図となっていますが、よく見ると路線のところに数字が書かれています。
これがその路線の時刻表が載っているページ数なんです。
ポイント!
・目的の路線のページを探すにはさくいん地図が便利

キロ数の出し方

まずは基本中の基本ということで、本州会社に含まれるJR東日本で幹線の東海道本線で試してみましょう。
東海道本線(東京~熱海)のページを開くと、東京駅から新橋・品川・川崎・・・とずらりと駅名が並んでいる隣に数字が並んでいると思います。
この数字が「営業キロ」です。
ここで記載されているのは東京駅起点の営業キロとなりますので、熱海のところにある「104.6」という数字は東京駅から乗る場合にのみ適用できます。
東京駅以外の駅からの営業キロを求める場合は、熱海駅のキロ数(104.6)から乗車する駅のキロ数を差し引くことになります。
横浜駅から熱海駅ですと 104.6 - 28.8 = 75.8 となります。
これは営業キロ以外のキロ数を求める場合も同様となりますのでしっかり身につけておきましょう。
特にそのキロ数がどの駅を起点としたものなのかはしっかり確認して下さい。
また、通常は時刻表の一番上にある駅が起点となっている場合がほとんどですが、中には実際の列車の運行系統を考慮して時刻表の途中の駅を起点にキロ数を記載している場合もあります。
そのような場合で、起点となる駅を通り越してキロ数を求めたい場合は、逆に足し算になります。基本的な算数なので大丈夫だとは思いますが、「起点駅を意識する」ことを忘れないで下さい。
続いて、高山本線のページを開いてみて下さい。
今度は数字が2つ書かれているはずです。1つは「換算キロ」でもう1つが「営業キロ」となります。
利用パターンによってどちらを使うか異なります。2つが別個のものだということをご理解の上、2つの数字をごっちゃにしないようにお願いします。
最後に、豊肥本線のページを開いてみて下さい。
こちらも2つの数字が並んでいますが、1つは「擬制キロ」、もう1つが「営業キロ」です。
こちらもごっちゃにしないようにご注意下さい。
ポイント!
・キロ数は「乗る駅のキロ数 - 降りる駅のキロ数」の絶対値が基本
・キロ数の起点となる駅をまたがって利用する場合はキロ数の足し算

運賃表に当てはめる

さっきから運賃表、運賃表と言うがどこにあるんだというお話です。
時刻表の後ろの方にピンク色(JR時刻表の場合ですので、他の時刻表では異なる場合があります)の紙で刷られたページがあると思います。通称「ピンクページ」なんて言ったりしますが、ここにはJRの制度や運賃・料金に関する事項が記載されており、この中に運賃表もあります。
運賃表も何種類もあり、利用する区間が幹線なのか地方交通線なのか、本州会社なのか三島会社なのかでどの運賃表を適用するかが異なってきます。
A表からG表まであり、そのパターンごとに適切な運賃表に当てはめないと正しい運賃が求められません。
各表の適用条件を表にしましたのでご覧ください。
A表 本州会社の幹線のみを利用する場合
B表 本州会社の地方交通線のみを利用する場合
C表 三島会社の加算額表
D表 JR北海道地方交通線の加算額表
E表 JR北海道の幹線のみを利用する場合
F表 JR北海道の地方交通線のみを利用する場合
G表 JR四国・JR九州のみを利用する場合
なお、C表・D表は加算の概念がこの先で出てくるため、紹介のみとし、詳しいことは後で説明します。
運賃表に当てはめる作業はまず適用すべき運賃表を選び、運賃を求める区間のキロ数を端数切り上げをして整数のみにします。
そうしたら、その数字が該当するところを探します。

ポイント!
・運賃表は会社や幹線・地方交通線の違いにより7種類
・運賃表に当てはめるときはキロ数は端数切り上げをする

境界駅を知ろう

本州会社と三島会社で運賃が異なるのは前述の通りですが、具体的にどの路線がどの会社の管轄なのかを知らないとどの表に当てはめてよいかわかりません。
しかし、全ての路線と管轄会社を丸暗記するのは大変です。そこで、運賃が異なる三島会社と本州会社の境界駅だけ覚えれば、あとはその駅より手前か、向こうかで会社が判断出来ます。
なお、本州会社同士は運賃が全く同じなので境界駅は知らなくても問題ありません。
JR東日本 ←奥羽本線 新青森 北海道新幹線→ JR北海道
JR東日本 ←東北新幹線 新青森 北海道新幹線→ JR北海道
JR東日本 ←津軽線 中小国 海峡線→ JR北海道
JR四国 ←瀬戸大橋線 児島 瀬戸大橋線→ JR西日本
JR九州 ←山陽本線 下関 山陽本線→ JR西日本
JR九州 ←鹿児島・日豊本線 小倉 山陽新幹線→ JR西日本
JR九州 ←鹿児島本線・九州新幹線 博多 山陽新幹線→ JR西日本
なお、JR九州とJR西日本の境界が3つあるのは、九州内である山陽新幹線の博多~新下関間はJR西日本となっており、山陽新幹線と在来線・九州新幹線とを乗り継ぐ駅によって境界駅が変わるためです。
ポイント!
・境界駅を知っておくと路線と管轄会社の関係が理解しやすい
・JR九州⇔JR西日本は乗り継ぎパターンや利用経路で境界駅が3つある

実際に運賃を求めてみよう

ここまでの基礎知識を持ってすれば、一番簡単なパターンでは既に運賃を出すことが出来るようになったはずです。
今回は東海道本線の東京駅から小田原駅までの運賃を求めてみましょう。
時刻表の東海道本線のページを開くと営業キロが載っています。今回は小田原駅までの運賃ですが、営業キロは東京駅からのものなので小田原のところに書かれた営業キロをそのまま利用できます。
83.9と出た人は正解です。そうでない数字が出た人は違うところを見ている可能性がありますので見直してみて下さい。
さて、ここで次にするべき作業は端数処理ですね。ここで間違えて欲しくないのは決して「端数切捨て」や「四捨五入」ではないということです。
運賃計算のキロ数に関しては常に端数切り上げということをしっかりと理解しておきましょう。
今回は83.9kmですから、端数処理をして84km、本州会社の幹線ですからA表を適用し、81~90に該当するのでそこに書かれた1520円が正解です。

基本的な問題

ここからは実際に実例を上げながら運賃計算の解説をして行きたいと思います。

本州会社の幹線

先ほどと同じ例ですが基本中の基本なのでもう1度やっておきましょう。
今度は東北本線の大宮駅から宇都宮駅までの運賃を求めてみましょう。
まずはキロ数を求めます。大宮のところに書かれている30.3と宇都宮のところに書かれている109.5という2つの数字を拾い、引き算をして間の差を求めます。
109.5 - 30.3 = 79.2 という答えが出たら端数処理をして80kmです。
そしたら、今回も本州会社の幹線なので適用する運賃表はA表です。A表で80kmは1340円と出れば正解です。

本州会社の地方交通線

今度は地方交通線です。地方交通線のみを利用する場合は営業キロを使用します。
今回は高山本線の岐阜駅から高山駅までの運賃を求めてみましょう。
高山本線では岐阜駅起点でキロ数が出ていると思いますので引き算は必要ないでしょう。
ただ1つだけ注意が必要なのが「換算キロ」と「営業キロ」の両方が載っていることです。
今回使用するのは営業キロの方ですので、正しい数字を拾いましょう。
なお、どっちがどっちか分からなくなったときは「数字の小さいほうが営業キロ」という風に覚えるとよいでしょう。
さて、岐阜から高山の営業キロは136.4kmです。もし150.0kmと思った方は間違って換算キロを拾っています。
これも端数処理して137km、本州会社の地方交通線のみですので、B表を適用し、2590円が正解です。

JR北海道の幹線

三島会社同士でも運賃が異なるため三島会社は個別に取り上げます。
今回は函館本線の函館から長万部までの運賃を求めてみましょう。なお、大沼~森間は大沼公園経由とします。
営業キロは112.3km、端数処理して113km、今回はJR北海道の幹線のみですので運賃表はE表、2310円が正解です。

JR北海道の地方交通線

それでは今度は地方交通線に行きましょう。
宗谷本線の旭川から稚内までの運賃を求めてみましょう。
JR北海道も地方交通線のみの場合は用いるのは営業キロです。
旭川~稚内の営業キロは259.4km、端数処理して260km、運賃表はF表で5610円が正解です。

JR九州・JR四国の幹線

JR九州とJR四国は運賃自体は異なりますが計算方法は同一で同じ運賃表にJR九州とJR四国の運賃を併記されているので同一扱いします。
鹿児島本線の博多から熊本の運賃を求めてみましょう。
営業キロは118.4km、端数処理して119km、JR九州は運賃表がG表となり、2170円です。

JR九州・JR四国の地方交通線

今度は牟岐線の徳島から阿南までの運賃を求めてみましょう。
今までの流れからして「営業キロ」を使用して、地方交通線用の運賃表に・・・と思った方、今までの内容をよく理解していただいている証ではありますが、JR九州・JR四国については不正解です。
ピンクページをご覧頂くと分かりますが、そもそもJR九州・JR四国の地方交通線用の運賃表なんて存在しません。
ではどうするのかというと、擬制キロを使用します。
徳島~阿南間の擬制キロは27.0km、端数処理して27km、運賃表は先程と同じG表ですが、見るのはJR四国の運賃ですのでご注意下さい。
27kmのJR四国の運賃は560円ということが出てくれば正解です。
ポイント!
・パターンごとに使用するキロ数や運賃表を正しく理解しよう

複数の路線にまたがる場合

基本的な問題では意図的に1つの路線で完結する区間のみを取り上げていました。これは複数の路線にまたがる区間だと計算が少しややこしくなるためです。
この項では実際の鉄道旅行ではよくあるであろう複数の路線にまたがるケースを取り上げていきます。

基本的な考え方

前のページで説明したようにJRでは乗り換えの有無に関わらず最初に乗る駅から最後に降りる駅までの通算で運賃を求めます。
具体的には利用する区間のキロ数を合計し、合計したものを端数処理してから運賃表に当てはめます。

本州会社の幹線同士

東京駅から東海道本線で名古屋へ、関西本線に乗り継いで四日市へ向かう場合を考えてみましょう。
まずはキロ数を求めます。東京から名古屋は東海道本線ですが、東海道本線は複数のページにまたがって載っていて計算が煩雑になるため、今回は東海道新幹線のページを利用しましょう。
東京~名古屋間の営業キロは366.0kmです。さて、端数処理・・・と思った方、もしいたら気をつけて下さい。端数処理はすべてのキロ数を合計した後で行います。
計算途中で端数処理をしてしまうと結果が変わってくる可能性があるので十分ご注意下さい。
さて、話を戻して続いては関西本線のキロ数を出します。名古屋~四日市間は37.2kmです。
そうしたら合計を出します。366.0 + 37.2 = 403.2 と出た時点で初めて端数処理します。端数処理して404km、本州会社の幹線のみなのでA表に当てはめて6930円が正解です。

本州会社の地方交通線同士

新潟駅から越後線で吉田へ、弥彦線に乗り換えて弥彦へ向かう場合を考えてみましょう。
地方交通線のみですので、まずは営業キロを出します。新潟~吉田が34.0km、吉田~弥彦が4.9km、合計して38.9km、端数処理して39kmとなり、地方交通線のみなのでB表に当てはめて770円が正解です。

三島会社では・・・

三島会社の幹線同士・地方交通線同士の計算方法は基本的に上の2つの例の応用で、JR北海道は常に営業キロ、JR九州、JR四国では幹線なら営業キロ、地方交通線なら擬制キロを合計したものを端数処理した後、それぞれ対応する運賃表に当てはめるだけです。
営業キロなのか換算キロ、擬制キロなのか、どの運賃表を適用するか、ということは基本的な問題をご覧ください。

幹線と地方交通線をまたがる場合

ここからが少し難しくなります。今まで名前だけ出ていて実際には使っていなかった換算キロがここで活躍することになります。
幹線と地方交通線をまたがって利用する場合は幹線の営業キロと地方交通線の換算キロ(擬制キロ)を合計した後で幹線用の運賃表に当てはめます。

例1.本州会社のケース

高崎から上越線で渋川、吾妻線で万座・鹿沢口へ向かう場合を考えてみましょう。
まず高崎から渋川は幹線である上越線ですので、営業キロを求めます。営業キロは21.1kmです。
続いて渋川から万座・鹿沢口までは地方交通線である吾妻線ですので、換算キロを求めます。換算キロは57.8kmです。
この2つの数字を合計したものが運賃計算キロとなります。21.1 + 57.8 = 78.9、端数処理して79kmが運賃計算キロです。
これをA表に当てはめて1340円が正解です。

例2.JR北海道のケース

札幌から函館本線で旭川、宗谷本線で稚内へ向かう場合を考えてみましょう。
札幌から旭川は幹線である函館本線ですので、営業キロです。この区間の営業キロは136.8kmです。
続いて旭川から稚内は地方交通線である宗谷本線ですので、換算キロです。この区間の換算キロは285.3kmです。
これら2つの数字を合計し、136.8 + 285.3 = 422.1、端数処理して423kmが運賃計算キロです。
これをE表に当てはめて7920円が正解です。

例3.JR九州・JR四国のケース

鹿児島中央から九州新幹線で熊本、豊肥本線で大分へ向かう場合を考えてみましょう。
鹿児島中央から熊本の九州新幹線は幹線扱いですが、川内~新八代間は並行して走る在来線が第三セクターとなっているため、九州新幹線のページを利用しましょう。鹿児島中央~熊本の営業キロは170.5kmです。
続いて熊本から大分の豊肥本線は地方交通線なので擬制キロを用います。熊本~大分の擬制キロは162.8kmです。
これら2つの数字を合計し、170.5 + 162.8 = 333.3、端数処理して334kmが運賃計算キロです。これをE表に当てはめて6160円が正解です。
JR四国の場合も手順は同じですが、最後に運賃表で見るのはJR四国の運賃という点だけご注意下さい。
ポイント!
・本州会社とJR北海道では幹線は営業キロ、地方交通線は換算キロを合計して幹線用運賃表に当てはめる
・JR九州、JR四国では幹線は営業キロ、地方交通線は擬制キロを合計してG表に当てはめる
・幹線にまたがる場合、地方交通線の営業キロは一切使用しない
・端数処理はすべてのキロ数を合計した後で行う

本州会社と三島会社をまたがる場合

本州会社と三島会社では運賃が異なることは既にお伝えしたとおりです。
しかし、現実問題として本州会社と三島会社を直通運転する列車というものも存在しますし、直通運転でなくても本州会社と三島会社をまたがって利用する行程も十分にあり得ます。
そういう場合の計算方法についてです。

基本的な考え方

本州会社と三島会社をまたがる区間の運賃の計算方法は、まず全区間を本州会社だと仮定して運賃を求めます。
地方交通線は換算キロないし擬制キロを、幹線は営業キロを用いて運賃計算キロを求めます。
これをA表に当てはめます。ここで出てきた金額が基本額と呼ばれるものです。この数字はあとで使いますのでどこかにメモしておきましょう。
次に、三島会社を利用する区間の運賃計算キロです。これをそれぞれ対応する加算運賃表に当てはめます。
ここで出てきた金額が加算額で、基本額と加算額を合計したものがその区間の運賃になります。

例1.JR北海道と本州会社にまたがるケース

まずはJR北海道と本州会社にまたがるケースをやってみましょう。
北海道新幹線の新函館北斗駅から新青森駅まで乗車し、更に奥羽本線に乗り換えて弘前駅まで行く場合を考えてみましょう。
まずは全区間を本州会社だと仮定して運賃を求めます。
北海道新幹線も奥羽本線も幹線ですので北海道新幹線の新函館北斗駅~新青森間の営業キロの148.8kmと、奥羽本線の新青森駅と弘前駅間の営業キロの33.5kmを合計して、182.3kmをA表に当てはめて3410円が基本額になります。
続いて、JR北海道の管轄となる北海道新幹線の営業キロ148.8kmをC表に当てはめて550円が加算額となります。
基本額3410円と加算額550円を足して3960円が新函館北斗駅~弘前駅間の運賃ということになります。
また、北海道内で地方交通線にまたがる場合は、地方交通線の部分で営業キロではなく換算キロを用いることだけ気をつければ、以上の考え方と同じです。

例2.JR北海道にまたがり地方交通線のみのケース

今度は地方交通線のみの場合をやってみましょう。
と言いたいところなのですが、北海道新幹線開業以後、中小国~木古内間の海峡線(地方交通線)は事実上貨物列車専用となり、団体専用列車以外の旅客列車は運行されておらず、本州会社とJR北海道の地方交通線のみにまたがるケースは制度上はありえますが、実際に利用することは事実上不可能なケースとなっています。
将来的に青函トンネルを通過する在来線の旅客列車が復活することがあれば、このケースに該当する乗車券が成立することとなりますが、それまでは制度上だけ存在する幻のケースと言えるでしょう。
ポイント!
・まずは全区間を本州会社と仮定して基本額を算出する
・次に三島会社を利用する区間の運賃計算キロを元に加算額を算出する
・最後に基本額と加算額を合計したものが運賃となる。

加算運賃

先ほどの加算額とは似て非なるものなのでご注意下さい。
実は先程の運賃計算で出てきた運賃は、すべての区間に適用出来るものではないのです。
いくつかある例外のうちの1つがこの加算運賃です。
加算運賃は特別に建設費が高かった区間などで減価償却や維持費の確保のためその区間を通過する旅客に対して通常の運賃に加えて、特別に加算した運賃が追加されます。
私鉄でも同様の制度が導入されているケースがありますが、今回はJRのみ紹介すると全部で4区間に設定されています。
以下の表にまとめましたのでご覧ください。
路線名 区間 加算運賃の額
千歳線 新千歳空港~南千歳 20円
関西空港線 全線 220円
関西空港線 日根野~りんくうタウン 160円
関西空港線 りんくうタウン~関西空港 170円
本四備讃線 児島~宇多津 110円
宮崎空港線 全線 130円
これに該当する区間を通過する場合は通常の方法で算出した運賃にこの加算運賃を足したものが運賃となります。
例えば、札幌から新千歳空港の営業キロは46.6km、端数処理して47kmをE表に当てはめると1130円となりますが、加算運賃20円が追加され、1150円がこの区間の運賃です。

特定区間運賃

こちらはJRが特別に区間を定めて、その区間で完結する運賃は本来の金額より割安にするというものです。
注意が必要なのが、特定区間で完結する場合のみであり、1区間でも特定区間から出てしまうと通常の方法で運賃計算をします。
東京と大阪に設定され、その区間内のみを利用する場合は専用の運賃表に基づいて運賃を計算しますが、これは国内旅行業務取扱管理者等の資格試験の問題として出題されることもまずありませんし、時刻表に載っている通りで特に解説も必要ないと思いますので簡単な紹介に留めます。

割引の適用と小児運賃

前のページでも往復割引、学生割引といった割引運賃の話が出ましたがそれの具体的な話です。
今までの解説で出した運賃の金額は「大人普通運賃」と呼ばれるもので、小児の場合は半額にします。
半額にする際に発生した10円未満の端数は切り捨てとなります。キロ数の時とは異なりますのでご注意下さい。
例えば大人普通運賃が1110円ならば小児運賃は550円となります。
また、その他の割引についても端数は全て切り捨てです。
割引は原則として複数の割引を併用することはできませんが、学生割引と往復割引に限っては併用が可能となっています。その場合は往復割引を先に適用し、それから学生割引を適用します。
気をつけて欲しいのは往復割引(10%)+学生割引(20%)で30%引きにはならないということです。10%引いたものから20%引きが正解です。
また、小児に割引を適用する場合、大人普通運賃を半額にしたあと、そこから割引を適用する形になります。
ポイント!
・割引後の10円未満の端数は切り捨て
・小児は半額、往復割引は10%引き、学生割引は20%引き
・往復割引と学生割引を併用する場合は往復→学生の順で適用