キハ58系気動車
概要
国鉄が開発した急行型気動車です。
なお、キハ58系というのは正式な形式名ではなく、キロ28形、キロ58形、キハ28形、キハ58形、キユ25形とこれらの総称です。
本形式の前身としてキハ55系がありましたが、走行性能こそ問題なかったものの、客室設備などが当時の急行列車としての見劣りする問題があり、キハ55系と同等の走行性能で、急行列車として十分な設備を持つ車両として開発されたのが本形式です。
本形式は幹線・ローカル線に関わらず各地の急行列車として活躍し、スピードアップと無煙化に貢献しました。
しかし、JR化後は急行列車自体が減少したことや、地方幹線にも電化が広がったことによる活躍の場は減り、普通列車への転用もあったものの、末期はジョイフルトレイン観光列車としてわずかに残る程度になり、それも2022年までに全廃となりました。
車体は普通鋼製で、ベージュを基調に赤を配した塗装が施されました。
また、幅広車体を採用しているため、裾絞りの車体断面となっている他、雨樋が車両限界に抵触しないように張り上げ屋根構造を採用しています。
客室扉は片開きを片側2箇所ずつ設置していますが、キハ55系より広い850mmの扉としています。
車内は普通車では当時の急行列車として一般的な固定クロスシートとしており、車内照明は従来の白熱灯から蛍光灯へ変更され、車内が明るくなりました。
グリーン車はリクライニングシートとなっています。
暖房はエンジン冷却水を利用した温水暖房を採用していましたが、冷房については当初搭載していませんでした。
走行機器は定格180PSを発揮するDMH17H形ディーゼルエンジンに、TC-2A形またはDF115A形液体式変速機を組み合わせています。
エンジンを1基ないし2基搭載しており、一般型気動車よりもパワフルになっています。
これは当時の気動車として一般的な構成で、ブレーキも当時としては一般的な自動空気ブレーキです。
最高速度は95km/hですが、JR東海に継承された一部が改造により110km/h対応となりました。
主な形式区分としては北海道向けのキハ56系信越本線向けのキハ57系、本州・四国・九州向けのキハ58系、郵便車用のキユ25形、勾配線区の冷房化のために登場したキハ65形があります。
基本形式がキハ58系であり、キハ56系は北海道向けということで寒冷地仕様になっています。
キハ57系は信越本線の横川~軽井沢間(横軽)が当時アプト式であったことから、ラックレールと干渉しない構造の台車を採用していました。
しかし、登場からわずか2年でアプト式が廃止され粘着式の新線に切り替わったため、それ以後はキハ58系と共に本州や四国で活躍しました。
また、キハ56系・キハ57系・キハ58系の3形式のうち、エンジンを1基のみとしたキロ26形、キロ27形、キハ28形、キロ28形がそれぞれ存在します。
キユ25形は郵政省所有の私有郵便車で、四国地区で活躍しましたが、鉄道郵便の廃止に伴い1986年までに全車引退しています。
キハ65形は勾配線区での冷房化を進めるために登場した形式で、大出力エンジン(定格500PSのDML30HSD形)を搭載し、3両分の冷房電源を供給できるディーゼル発電機も搭載しています。
ローカル急行の代名詞的存在となり、日本の気動車としては史上最多の両数が製造され、一時は国鉄の気動車のうち3割を本形式が占めるほどとなる時期もありましたが、急行列車の減少が進むと、普通列車に転用されたり、ジョイフルトレインなどへ改造される事例も現れました。
国鉄分割民営化ではキハ56形はJR北海道へ、それ以外はJR東日本・JR東海・JR西日本・JR四国・JR九州に継承されました。
JR各車では冷房化を中心とした改造が実施された他、エンジン換装が実施され出力構造が図られる例もありました。
ジョイフルトレインや観光列車への改造例としては「おばこ」「エレガンスアッキー」「サロンエクスプレスアルカディア」「エーデルワイス」「こがね」「Kenji」「ふれあいSUN-IN」「ふれいパル」「ゴールデンエクスプレスアストル」「リゾートサルーン・フェスタ」「ビバ・ウエスト」「セイシェル」「旅立ち」「レインボー」「らくだ」「ジョイフルトレイン大分」「サウンドエクスプレスひのくに」「ゆ~とぴあ」「Bun-Bun」「サルーンエクスプレス」「ジョイフルトレイン長崎」「アクアエクスプレス」「ふれあいGO」「しらぬい」「TORO-Q」「あそ1962」などの例があります。
歴史
1961年にキハ56系・キハ56系・キハ58系が続けて登場し、それぞれ急行「狩勝」「志賀」「アルプス」にて運用を開始しました。
その後1969年まで製造が続けられ、1970年代以降、亜幹線の急行からローカル線の普通列車まで幅広く活躍しました。
しかし、1980年代には入ると新幹線網の整備とともに急行列車も整理の対象となり、特急へ格上げされたり列車そのものの廃止といった例も見られ、本形式の活躍の場は狭まっていきました。
国鉄分割民営化を経てJR各車に継承された後も同様の傾向であり、普通列車用に転用されることが多くなりました。
これはキハ40系では出力不足から勾配線区に不向きだったのに対し、本形式は急行用ということで2基エンジン搭載の車両が多く出力に余裕がある上、多くが冷房化されていたことから、ローカル線の冷房化にも貢献しました。
しかし、それも1990年代になると後継車による置き換えや路線電化による運用の縮小などから廃車が進みました。
また、年代的には近いキハ40系に比べて早期に廃車された要因としては、発がん性が問題になった石綿(アスベスト)が本形式の内装やエンジンガスケットに使われていたことであります。
2007年に急行「みよし」が廃止になると本形式の急行としての定期運用が終了しました。
また、普通列車としても2011年をもって運用を終了し、原型を残す車両はJRグループからは全車引退となりました。
その後、キハ28-2346が保留車として在籍していましたが、翌2012年にいすみ鉄道へ譲渡され、いすみ鉄道で観光列車として活躍しました。
その他、ジョイフルトレインとして「Kenji」が最後まで残っていたものの、それも2018年に引退し、JRからは本形式が全廃となりました。
その後はいすみ鉄道でのみ活躍していましたが、2022年11月27日をもって定期運用を終了し、以後は動態保存されています。
現状
JRグループからは全車引退済みです。
いすみ鉄道のキハ28-2346は国吉駅構内で動態保存されており、今後体験乗車や運転体験として活用する方針です。
その他の保存車としては和歌山県有田郡有田川町の有田川町鉄道公園にてキハ58003が、広島県山県郡安芸太田町の旧加計駅構内にてキハ28-2394の2両が動態保存されている他、群馬県安中市の上信越自動車道横川サービスエリア上り線にてキハ58-624(先頭部以外はモックアップ)が、群馬県安中市の碓氷峠鉄道文化むらにてキニ58-1が、岐阜県美濃加茂市のJR東海美濃太田車両区にてキハ58-787が、福井県敦賀市の敦賀赤レンガ倉庫にてキハ28-3019が、岡山県津山市の津山まなびの鉄道館にてキハ58-563とキハ28-2329が、広島県山県郡安芸太田町の旧安野駅にてキハ58-554が、愛媛県松山市内にてキユ25-1が、同じく松山市内にてキユ25-2が静態保存されています。
走行音
JR九州キハ58-139(あそ1962)
録音区間:新水前寺~水前寺(あそ1962)(お持ち帰り)
いすみ鉄道キハ28-2346
録音区間:久我原~東総元(お持ち帰り)
走行線区(特記無い場合は全線)
全車引退済みで現存しません。
2025.08.25現在
フォトギャラリー
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国鉄色
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九州色
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同乗降扉
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TORO-Q
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同車内
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あそ1962
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同ロゴ
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同行先表示板(サボ)
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同座席
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同サイクルスペース
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いすみ鉄道所属車(キハ28形)
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同ヘッドマーク
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同先頭部種別幕
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同乗降扉
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同所属表記
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同車端部銘板
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同座席(ボックス席)
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同座席(ロングシート)
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同網棚
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同車番表記(車内)
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Kenji
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同先頭部行先表示
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同乗務員扉
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同車番表記(車外側面)
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同乗降扉
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同乗降ステップ
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同中間運転台部
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同車端部銘板
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同車端部表記
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同所属表記
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同車内
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同座席(その1)
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同座席(その2)
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同座席テーブル(展開時)
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同座席番号表示
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同座席灰皿
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同冷房吹き出し口
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同マイク端子
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同荷物置き場
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同デッキ部扉
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同車番表記(車内)
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同展望席
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同運転台