京王8000系電車
概要
京王電鉄京王線の府中駅付近、北野駅付近で行われていた高架化工事が完了したことを機に計画されたダイヤ改定による輸送力増強に備え、京王6000系以来20年ぶりのフルモデルチェンジ車として登場した通勤形電車が京王8000系です。1989年より「リフレッシング京王」運動が展開され、京王電鉄の社内で新型車両を期待する声が高まったことも当系列の製造決定を後押ししました。4、6、8両編成がそれぞれ製造され、4両編成と6両編成は互いを連結した10両編成で運用することが可能です。
当系列はフルモデルチェンジ車として位置づけられたために数々の新機軸や新デザインが導入され、ゼロベースからの設計が行われました。また、京王線と相互直通運転を行っている都営地下鉄新宿線に乗り入れるためにはある一定の条件を満たしていることが必要ですが、これにより設計上の制約が生じることを避けるため、当系列は京王線専用車とされています。しかし、京王電鉄の地下路線である京王新線への乗り入れは可能な車体寸法を採用しています。
車体には京王7000系に続いてステンレス車体を採用し、車体の長さは20mで片側4ドアとなっています。当系列の設計にあたり、流線型を含む各種の前面デザインが検討されました。しかし、客室面積を犠牲にしないこと、車体の長さを20mにすること、編成を分割・併合して使用できるように正面に貫通扉を付けること、といった各種の制約を満たした前面デザインを採用しています。なお、前面形状が先述の設計制約によって複雑となったため、乗務員扉までの前頭部は普通鋼で製造され、アイボリー色で塗装されています。
前面のガラスには曲面ガラスを採用し、貫通扉の柱を黒く塗装することで窓ガラスとの一体感を持たせるようにしています。貫通扉はプラグ式ドアとなっていますが、若干の改造で貫通幌が設置できる構造になっています。ステンレス車体であるために車体全てには塗装はされないものの、車体の周りにはイメージカラーである京王レッドと京王ブルーの帯が巻かれています。車体側面には京王電鉄の車両では初めて車外スピーカーが設置されました。
通勤形車両として製造されたため車内の座席はロングシートですが、初めてバケット型が採用されました。座り心地の改善のために試作が行われ、従来車よりも堅めのシートとなっています。乗務員室の運転台には従来車と同様のワンハンドル式マスコンを採用し、乗務員支援モニタも設置されました。走行制御装置には京王電鉄の車両では初めてVVVFインバータ制御を採用しています。
歴史
1992年5月から営業運転を開始し、同年にはグッドデザイン賞を受賞しました。4両編成と6両編成は製造途中からLED式方向幕を装備するように仕様が変更されています。8両編成は正面方向幕が幕式、側面方向幕がLED式という変則的なものでしたが、後に正面方向幕もLED式のものに交換されました。
当系列の登場当時、休日ダイヤの特急列車は高幡不動駅で高尾山口方面と京王八王子方面に分割・併合の上で運転されていたため、4両編成と6両編成を組み合わせた10両編成が特急列車を中心に使用されていました。2006年にこの分割・併合を行う特急運用が消滅した後、終日10両固定編成の扱いで運転されることが標準となり、中間に連結される形となっていた先頭車2両は付随車に形式変更されています。
2001年までに全編成に転落防止幌が設けられ、同年から2003年にかけては客室ドア上部にLED式車内案内表示器が設置されています。2005年頃にはパンタグラフをシングルアーム式のものに、2008年頃には方向幕をフルカラーLED式のものに換装しています。同年には京王線系統でATCを使用した運転が始まるのを前に、乗務員室にATC機器が設置されました。
2008年8月に、京王電鉄高尾線で発生した土砂崩れに当系列が巻き込まれ、脱線するという事故が発生し、先頭車1両が廃車されました。新たに製造された代替車は中間付随車として組み込まれましたが、横に連結される車両が付随車化された先頭車であるため、そちら側の貫通路は塞がれて通り抜けができなくなったほか、車内の細部の仕様が従来車から変更されています。なお、この代替車の横に連結される付随車化された先頭車には特徴的な転落防止幌が設置されています。
現状
現在も一貫して京王線系統で使用され、8両編成が他形式と連結ができないために単独で各駅停車を中心に、4両編成と6両編成を連結した10両編成が全ての種別で幅広く運用されています。
走行音
録音区間:分倍河原~聖蹟桜ヶ丘(準特急)(お持ち帰り)
走行線区(特記無い場合は全線)
京王電鉄 |
京王線、京王新線、京王相模原線、京王競馬場線、京王動物園線、京王高尾線 |
フォトギャラリー
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明大前駅にて
高幡不動駅にて
先頭部分側面
台車
側面スピーカーと京王ロゴマーク
LED式方向幕
中間車連結部分
先頭車連結部分
乗務員室部分
ドア内側部分
LED式車内案内表示器
車内
車内仕切り扉部分
付随車化先頭車と事故代替車の連結部分
事故代替車の塞がれた貫通路
付随車化中間車の運転台
3編成の並び 調布駅にて
花と寺社ヘッドマーク 柴崎駅にて