小田急2000形電車
概要
新宿駅を発着する各駅停車の8両編成化を推進するため、また小田急2600形の置き換えを行うために製造された通勤形電車が小田急2000形で、8両編成が登場しています。登場時には「環境にやさしい車両」「お客様にやさしい車両」「乗務員・駅員にやさしい車両」「保守にやさしい車両」といったテーマが掲げられていました。
小田急電鉄では1990年から翌年にかけて、ラッシュ時の乗降をスムーズに行うことを目的にドア幅を2mに拡大した小田急1000形のワイドドア車を製造し、使用を開始しました。しかし期待したほどの効果が得られなかった上に、ドアを広くしたことによる座席数の減少が問題視されました。そのため在来の通勤形電車と同等の座席定員の確保と乗降時間の短縮を両立するために検討が行われ、その結果、ドア間の座席を7人がけとし、ドア幅を約1.6mにすることが最適という結論に至りました。また、電子機器や走行装置も高性能かつメンテナンスフリーのものが新たに開発されていたこともあり、当系列の設計は1000形をベースとして、各種検討に基づいた車体構造の変更や機器の見直しを行ったものとなっています。
当系列は先述のとおり8両編成ですが、基本設計は10両編成であり、中間車2両を新たに挿入することが可能です。車体寸法やデザインは1000形とほとんど変わらず、ステンレス鋼製の車体を採用し、光沢を押えるために全面ダルフィニッシュ仕上げとなっています。ただし、先頭車に車椅子スペースを設置したため先頭車の長さが若干延長されたほか、ドア幅が1.6mとなったことで側面窓の配置も若干1000形とは違ったものとなっています。方向幕は当初からLED式のものを搭載しています。なお、当系列では小田急電鉄の車両で初めて転落防止幌を設置しました。
前面部分も1000形と同じく、デザインが小田急9000形に類似した繊維強化プラスチック(FRP)製となっていますが、車両番号の表記部分が1000形とは少し違います。前面の通過標識灯は第1、2編成では標準装備されていましたが、第3編成以降は省略されています。
車内の座席には通勤形電車では標準的なロングシートを採用していますが、小田急の通勤形電車として初めてバケットシートを採用し、着席位置を明確にすることで定員乗車の促進を図りました。先頭車の車端部には先に少し触れたように、小田急の通勤形電車として初めて車椅子スペースが設置されています。なお、第4編成以降は内装が若干変更され、窓ガラスを遮光ガラスとして日除けカーテンが省略されたり、車椅子スペースが乗務員室側に変更されたりしています。
ドア上部には車内案内表示器が設置され、LED式のものと路線図式のものが千鳥状に配置されています。なお、第3編成以降は車内案内表示器はLED式のものに統一されました。当系列は1000形での試験搭載を経た自動放送装置も本格的に採用しています。乗務員と対話可能な非常通報装置も全車両に取り付けられています。
運転台は従来車とは異なるデスクタイプとなり、乗務員支援のための多用途モニタ装置が組み込まれています。警笛にはそれ以前にも使用されていた空気笛とともに電子笛が採用され、走行装置にはIGBT素子を使用したVVVFインバータを採用しています。ちなみに当系列の第4編成は、同年に廃車となった2600形1本に試験的に搭載されていたVVVFインバータ装置を再利用して製造されています。
歴史
1995年から使用が開始されました。同年には通商産業省(当時)のグッドデザイン商品に選定されています。1999年には1編成の新宿方面先頭車に電気連結器を設置してブレーキ読み替え装置の試験を行いましたが、この際小田急電鉄で通常見られない12両編成で試運転を実施したため注目を集めました。この読み替え装置は後に製造されることになる小田急3000形で本格的に採用されました。
2002年には列車種別の増加に伴い、第1、2編成に搭載されていた路線図式車内案内表示器が撤去されました。なお、後日パンタグラフは全編成がシングルアーム式のものに交換されています。2007年からは滑走防止制御装置とD-ATS-P装置の設置工事が開始され、2009年に完了しました。同年からは方向幕をフルカラーLED式のものに交換する工事が始まっています。さらに2012年にはフルカラーLED方向幕を装備済みの第1、2編成の帯色が、従来の「ロイヤルブルー」から小田急4000形と同じ「インペリアルブルー」に変更されています。
現状
現在は各駅停車と区間準急の主力車両として活躍していますが、ホームの有効長の関係で定期運用の範囲に制限があります。
走行線区(特記無い場合は全線)
小田急電鉄 |
小田急小田原線(新宿~新松田)、小田急多摩線 |
フォトギャラリー
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登戸駅にて
フルカラーLED搭載車 代々木上原駅にて
LED式方向幕
フルカラーLED式方向幕
側面ロゴなど
中間車連結部分
インペリアルブルー色 代々木上原駅にて
同車両 中間車連結部分
運転台
運転台のモニタ装置
車内
乗務員室部分
車椅子スペース1
車椅子スペース2
LED式車内案内表示器
車内仕切り扉部分
下北沢駅付近地下化告知マーク 新宿駅にて
同マーク インペリアルブルー色 新宿駅にて