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小田急60000形電車




概要

2005年、小田急電鉄と東京メトロの両社はロマンスカーを使用した特急列車を東京メトロ千代田線に乗り入れる計画を発表しました。この日本で初めての試みとなる、座席指定制特急列車の地下鉄線直通運転を実現するために小田急電鉄開発した特急形電車が小田急60000形で、「多彩な運行が可能な特急列車」という意味を込めて"Multi Super Express"(略称:MSE)という愛称がついています。なお、当系列のデザインは建築家の岡部憲明が小田急50000形(愛称:VSE)に引き続いて担当しています。
当系列は全長20mの車両による4両編成と6両編成がそれぞれ製造され、両者を互いに連結することで10両編成での運用が可能です。車体の幅は地下鉄線乗り入れに対応した寸法とされました。先頭車には10両編成時でも編成の両端に位置する流線形の先頭車と、10両編成時には編成の中間に入る形となる平面形の先頭車の2種類が存在しています。車体は50000形に引き続き全てアルミニウム合金で製造され、流線形先頭車部分にはシングルスキン構造を、それ以外の部分にはダブルスキン構造を採用し、車体の型枠は一部を除き50000形と同じものを使用しています。
なお当系列は地下鉄線内を走行するため、また平面形先頭車に至っては編成間を貫通して通り抜けを可能とするために、どちらの先頭車の前面部分にも貫通扉が設けられています。なお、流線形先頭車の前面貫通扉には片開き式プラグドアを、平面形先頭車の前面貫通扉には両開き式プラグドアを採用しています。ちなみに、平面形先頭車は側面からエッジを回り込ませることによって流線形先頭車と同じイメージを持つように工夫されています。
側面ドアには片開き式の引き戸が、前面の愛称表示器と地下鉄線内で使用する運行番号表示器、そして側面の方向幕にはフルカラーLED式のものが採用されています。なお前面の愛称表示器と側面の方向幕は、任意の文字を愛称として登録できる「任意愛称表示」という新機能を備えています。塗装デザインには「地下鉄路線でも明るく見えるように」という岡部の提案によって、メタリック系の青色であるフェルメールブルーを車体全体に施した上で、ロマンスカーの伝統色として使用されてきたオレンジバーミリオンとホワイトの帯を巻くというデザインが採用されました。
車内の内装は小田急30000形(愛称:EXE)をベースとして設計され、ビジネス特急として落ち着いた雰囲気となることを図っています。座席には回転式リクライニングシートを採用しており、シートピッチは30000形よりも狭くなったものの足元の空間は逆に30000形よりも拡大されています。この座席はリクライニングさせた状態、また肘掛の収納式テーブルを展開した状態でも回転が可能な形状とされています。なお、この座席は従来のロマンスカーと同様に、列車が折り返す際の車内整備を省力化するため、スイッチ操作で一斉に自動回転できる機能を持っていますが、回転の仕方を工夫することで短時間での折り返しが可能となるように配慮されています。
天井は大きな円弧を描くスパンドレル構造とされ、照明は電球色の蛍光灯による間接照明となっています。車内ドアの上部にはフルカラーLED式車内案内表示器が取り付けられていますが、これは英語、中国語、韓国語による表示も可能です。3号車と9号車には、ワゴンによる車内販売の拠点となるカフェカウンターと清涼飲料水の自動販売機が設置されています。なお、カフェカウンターは箱根方面への特急運用に入ったとき、かつワゴン販売が行われていないときのみの営業となっています。ちなみに、2009年の増備車以降、車内デッキには小田急の車両として初めて監視カメラが設置されています。
乗務員室は背後の客室から見られることを前提とした「魅せる乗務員室」にし、かつ乗務しやすい環境となることを目指しました。前面の貫通扉とそれに伴う通路によりスペースが狭くなる平面形先頭車の乗務員室の運転台については、製造前にモックアップを作成することで運転士の意見を取り入れています。前面のガラスには合わせ強化ガラスを採用し、室内側には飛散防止フィルムを貼ることで乗務員の保護を図っています。運転台のマスコンにはワンハンドル式のものを採用したほか、運転士向けのEB装置を設置していますが、これは地下鉄線内では機能しないようになっています。
当系列では分割・併合に対応する機器として、30000形と同じ「自動ほろ装置」を採用しており、これは電源がない状態でも手動扱いで貫通扉の開放と渡り板の展開ができるようになっています。また、6両編成が単独で地下鉄線へ乗り入れる運用を考慮して、地下鉄線内での非常通路となる平面形先頭車の通路の幅は30000形よりも拡大されています。走行制御装置にはIGBT素子を使用したVVVFインバータ制御を採用し、パンタグラフはシングルアーム式のものを設置しています。なお、警笛には空気笛と電子笛、そして50000形と同様のミュージックホーンを採用しています。

歴史

当系列は2007年9月に小田急に搬入され、同月に海老名検車区で行われたファミリー鉄道展で展示されましたが、営業運行開始前の新型車両の展示は異例のことでした。翌年の3月から営業運転を開始し、小田急線内の駅では「青い、ロマンスカー」として大きく宣伝されました。営業運転開始後は当初の目的通り、千代田線に直通する特急列車に使用されたほか、連絡線を経由して東京メトロ有楽町線の新木場駅まで乗り入れる「ベイリゾート」にも使用されました。また臨時特急としての運用も行われるようになり、2008年夏には小田急江ノ島線へ直通する「湘南マリン号」に、2009年の元旦には「ニューイヤーエクスプレス」に、翌月には千代田線直通の臨時特急である「メトロおさんぽ号」に使用されました。
2008年にはワトフォード会議の第10回ブルネル賞車両部門奨励賞と、日本産業デザイン振興会のグッドデザイン賞を、翌年には鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞しています。2010年1月には10000形と7000形の連接台車に不具合が見つかったため、通常は両系列が使用される運用を当系列が代走しました。
2011年に、有楽町線へ直通するベイリゾートは同線のホームドア設置工事に伴って運行が休止され、翌年3月以降は運転中止とされました。2012年3月からは、6両固定編成がJR東海の御殿場線への直通特急である「あさぎり」で使用されるようになり、当系列が小田急20000形(愛称:RSE)を全て置き換える形となりました。これに伴い、6両固定編成の全編成に御殿場線乗り入れ対応工事が行われています。

現状

当系列は「スーパーはこね」以外の、小田急が運行するほぼ全ての特急列車に使用されており、愛称の"Multi"通りの活躍を見せています。また、50000形の検査時には50000形の運用に入るほか、「任意愛称表示」機能を使用した各種臨時・団体列車にも使用されます。

走行音

録音区間:松田~秦野(特急あさぎり12号)(お持ち帰り)

走行線区(特記無い場合は全線)

小田急電鉄 はこね 小田急小田原線、箱根登山鉄道 鉄道線(小田原~箱根湯本)
さがみ 小田急小田原線
えのしま 小田急小田原線(新宿~相模大野)、小田急江ノ島線
あさぎり 小田急小田原線(新宿~新松田駅の手前まで)、小田急・JR連絡線、御殿場線(松田~御殿場)
ホームウェイ 小田急小田原線、小田急江ノ島線(相模大野~藤沢)、小田急多摩線
メトロはこね 東京メトロ千代田線(北千住~代々木上原)、小田急小田原線(代々木上原~小田原)、箱根登山鉄道 鉄道線(小田原~箱根湯本)
メトロさがみ 東京メトロ千代田線(北千住~代々木上原)、小田急小田原線(代々木上原~本厚木)
メトロホームウェイ

フォトギャラリー

画像をクリックすると拡大できます。

流線形先頭車 回送列車 代々木上原駅にて

同先頭車 メトロさがみ 代々木上原駅にて

同先頭車 先頭部分側面

前面の愛称表示器

前面の運行番号表示器

ブルーリボン賞受賞記念ロゴ

流線形先頭車の連結器

平面形先頭車 えのしま 経堂駅にて

同先頭車 あさぎり 御殿場駅にて

同先頭車 先頭部分側面

フルカラーLED式方向幕

小田急電鉄のロゴ

60000形(MSE)のロゴ

車内デッキ部分

車内デッキのドア内側部分

車内通路と洗面所入口部分

車内貫通路部分の渡り板

車内客室の仕切り扉部分

フルカラーLED式車内案内表示器

座席

座席背面

座席肘掛の収納式テーブル

車内カーテン

車内
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