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小田急8000形電車




概要

急行用の20m級大型通勤形電車として増備が続いていた小田急5000形・5200形は、1980年代初頭には運用面・保守面で適正な車両数となる見込みとなっていました。そこで、5000形・5200形の導入以降に進歩した鉄道車両技術を取り入れた上で、省エネルギー化、保守の容易化、車両の長寿命化を図り、輸送力の増強と通勤形電車の大型化をさらに進めるための次世代通勤形電車を製造することになり、その結果登場した通勤形電車が小田急8000形です。
当系列は小田急9000形の登場以来約11年ぶりのモデルチェンジ車両となり、4両編成と6両編成がそれぞれ製造されました。また従来は小田急2600形が各駅停車用の車両、5000形・5200形が急行用の車両というように、それぞれの種別向けに車両の増備が行われていましたが、当系列ではそれを改め、特急以外の全ての種別に使用できる仕様とされました。そして当時在籍していた通勤形電車の各形式と相互に連結が可能であり、箱根登山鉄道 鉄道線の箱根湯本駅までの乗り入れにも対応しています。
車体には耐食性鋼を使用していますが、雨による腐食が特に予想される屋根や雨樋などには部分的にステンレスを使用しています。前面は大型曲面ガラスを使用したスケルトン構造で、窓周りの柱を黒色に塗装することで大きな1枚窓のような印象を与えるデザインとされました。また安全対策を考慮して従来の通勤形電車と同様に、貫通扉とその脇の手すりを設置しています。なお、乗務員室を前後方向に拡大したために乗務員室の横の戸袋窓は省略されています。
車体塗装にはケープアイボリーをベースとし、ロイヤルブルーの帯を入れたものが採用されましたが、後に登場する小田急1000形からはステンレス車体となり基本的に塗装が不要になったため、当系列はこの塗装を採用した最後の形式となりました。側面の窓には、こちらも腐食対策の観点からアルミニウム製のユニット窓を採用し、完全防水化を図っています。
車内の座席は通勤形電車では標準的なロングシートを採用し、座席のデザインやその配置、そして車内の定員は5000形・5200形のものを踏襲しています。1987年の最終増備車は車内の内装が若干変更されましたが、これは同年に新造された1000形に引き継がれています。なお、全車両の車内貫通路部分には、保安度と空調効果の向上のための仕切り扉を設置しています。
走行制御装置には省電力効果を発揮し、経済効果が電気子チョッパ制御よりも早く現れる界磁チョッパ制御を採用しています。またブレーキには電力回生ブレーキを採用しており、さらなる省電力化を図っています。

歴史

当系列は1983年春から営業運転を開始しました。当系列は数々のイベントおよびラッピング車両として使用された実績があり、まず第1編成は運用開始からしばらくの間「小田急懐かしの写真展号」というヘッドマーク付きで運用されていました。
1984年に増備された編成の一部は、製造当初より特別な塗装が施されたイベント電車として登場しました。この塗装は車体に巻かれていたロイヤルブルーの帯をなくした上で、当時の特急色のメインであったオレンジレッド、戦後間もない頃の特急色であったイエロー、そして戦前の車両塗装に採用されていたマルーンの3色を階段状の塗り分けとしたものでした。当初は「走るギャラリー」というヘッドマークが付けられていましたが、後に愛称が一般公募され、「ポケット号」という愛称になりました。
1986年には小田急小田原線沿線の向ヶ丘遊園で翌年から「蘭・世界大博覧会」が開催されることを記念し、一部の編成に5色のカラーストライプが施され、「オーキッド号」として運転されました。博覧会終了後は「フラワートレイン」としてしばらく運行が続けられていましたが、1987年中に「ポケット号」とともに塗装が元に戻されています。2002年11月には小田急百貨店の開店40周年を記念し、一部の編成の車体側面に小田急百貨店の包装紙と同様のデザインが施されていました。
1987年1月、踏切事故により小田急旧3000形(愛称:SE)が1編成使用不能となりました。事故当時、他の特急形電車も一部が検査に入っていたため特急形電車が一時的に不足し、その代役として当系列が2日間だけ特急「さがみ」の一部列車を担当しました。この運用では、種別幕に「臨時」と表示し、特急料金は不要とされました。
2002年からは当系列の6両編成を対象としたリニューアル工事が始まりましたが、施工時期によって仕様が少しずつ異なっていることが特徴です。同年に当系列で初めてリニューアル工事が施工された2編成は、いったん塗装を全て剥離した後で車体修繕が行われました。主な工事内容として前面上部に設置されていた通過標識灯が撤去されたほか、車側灯・尾灯・方向幕のLED化が行われ、パンタグラフはシングルアーム式のものに交換されました。
車内の内装も一新され、座席はバケットシートに交換されたほか、ドア上部にドアチャイムとLED式車内案内表示器が設置されました。また、車内に従来から設置してあった非常通報装置を警報式のものから乗務員との対話可能式のものへの交換も行われています。側面の窓ガラスには全てUVカット遮光ガラスを採用したため、窓の日除けカーテンは取り外されています。そして、運転台にはモニタ装置が新設され、自動放送装置も設置されました。
2003年以降のリニューアル車からは、車体および車内の内装については前年に行われたリニューアル工事と同等の内容で工事が行われましたが、走行機器が小田急3000形の3次車以降で採用されたものと同じ機器で更新され、それに伴い走行制御装置はVVVFインバータ制御に変更されています。運転台には新たにワンハンドル式マスコンを設置しています。2005年以降のリニューアル車からはその形状が変更され、加えて方向幕をフルカラーLED式(字体は明朝体)のものに変更しています。
2007年以降のリニューアル車からは内装に小田急4000形の意匠が取り入れられるようになり、車体側面の「OER」の切り抜き文字が撤去されるようになりました。また同年からは4両編成についてもリニューアル工事が開始されています。2008年以降のリニューアル車からはフルカラーLED式方向幕の字体がゴシック体に変更されています。2012年にはリニューアル車のフルカラーLED式方向幕の字体がゴシック体に統一され、同年以降のリニューアル車からは車内の照明にLEDが採用されています。
なお、6両編成のリニューアル工事は2009年中に終了しましたが、2013年までは4両編成のリニューアル工事が行われる予定です。

現状

現在は当系列のほとんど全てがリニューアル車となっており、小田急電鉄の全線にわたって活躍しています。ちなみに、箱根登山鉄道 鉄道線の箱根湯本駅までの乗り入れ運用はなくなっています。
なお界磁チョッパ制御で残る8000形はほんのわずかとなった上、2013年には当系列へのリニューアル工事が全て終了する予定であるため、近い将来に当系列の走行制御装置はVVVFインバータ制御に統一される見込みです。

走行音

界磁チョッパ制御車
録音区間:新宿~代々木上原(急行)(お持ち帰り)
VVVFインバータ制御車
録音区間:代々木上原~新宿(急行)(お持ち帰り)

走行線区(特記無い場合は全線)

小田急電鉄 小田急小田原線、小田急江ノ島線、小田急多摩線

フォトギャラリー

画像をクリックすると拡大できます。

界磁チョッパ制御車 経堂駅にて

方向幕

車体側面の切り抜き文字

リニューアル車 LED式方向幕 代々木上原駅にて

LED式方向幕

リニューアル車 フルカラーLED式方向幕(明朝体) 大和駅にて

フルカラーLED式方向幕(明朝体)

リニューアル車 フルカラーLED式方向幕(ゴシック体) 海老名駅にて

フルカラーLED式方向幕(ゴシック体)

先頭部分側面

小田急電鉄のロゴ

シングルアーム式パンタグラフ

中間車連結部分

リニューアル車 運転台

リニューアル車 乗務員室部分

リニューアル車 車椅子スペース

リニューアル車 車内

リニューアル車 LED式車内案内表示器

リニューアル車 対話可能式非常通報装置

リニューアル車 車内仕切り扉部分

終電後、留置される8000形 小田原駅にて
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