西武8500系電車
概要
狭軌路線かつ非電化であった西武山口線(1950年の開業時点では西武園遊園地の遊戯施設「おとぎ線」)の運行開始から30年が経った1980年代、山口線の施設および当時使用されていた蒸気機関車などの車両の老朽化が問題となりつつありました。また1979年に山口線の沿線に存在していた遊園地「ユネスコ村」に隣接して西武ライオンズ球場(現在の西武ドーム)が開場したため、西武多摩湖線の西武遊園地駅方面から西武ライオンズ球場へのアクセス改善が求められていました。
この2つの課題を解決するため、山口線を新たに新交通システム路線とすることで施設の更新と再整備を行い、かつ西武ライオンズ球場へのアクセス路線とすることになり、その際に新たに導入された新交通システム車両が西武8500系です。ちなみに、当系列の形式称号の由来は製造開始が1985年だったことに由来し、また当系列は大手私鉄が保有する唯一の新交通システム路線用車両となっています。
当系列は4両編成で、各車ごとに片側1つずつドアを設置しています。前面は左右非対称のデザインで窓下にレオをかたどったヘッドマークが付いており、左側には非常扉が設けられ、上部には手動式の方向幕が備えられています。塗装は白地に青、赤、緑の順番に上から並べられた帯を巻く、通称「ライオンズカラー」となっており、西武ライオンズ球場を始めとする系列レジャー施設へのアクセス路線用車両であることをアピールしています。
運転台には西武鉄道では初めてワンハンドルマスコンを採用し、ワンマン運転用の機器が設置されています。車内の座席にはクロスシートを採用し、自動放送装置が装備されているほか、運転室後部は全面展望とワンマン運転時を考慮して開放的な設計となっているため、車内で最も先頭寄りの座席は展望席のようになっています。
また、当系列は他の新交通システム路線と同様、第三軌条付きのコンクリート軌条を走行するためにゴムタイヤと集電装置を車体下に取り付けています。しかし、走行制御装置には西武鉄道の車両のみならず、新交通システム車両としても日本初となるGTO素子を使用した定速制御付きVVVFインバータを採用しました。加えて、一般的に新交通システム路線ではATOを使用した自動運転が行われることが多いのですが、当系列は西武鉄道の一般路線と同じくATSを使用した手動運転方式であり、イニシャル・ランニングコストを抑制しました。
このように、当系列は新交通システム車両であるものの、一般的なそれとは少し異なる車両となっていることが分かります。また、当系列は西武鉄道で初となる新技術を数多く採用し、それらは本系列で運用実績の蓄積が行われた後に新形式車両に反映されたため、当系列は西武鉄道内でも重要な役割を果たすこととなりました。
歴史
1985年から営業運転での使用が開始されました。1993年4月より、山口線および当系列の愛称が「レオライナー」とされ、それに伴い前面ヘッドマーク直下に「LEO LINER」のロゴが追加されました。
製造後15年が経過した2000年代、VVVFインバータに使用していたGTO素子の劣化が進んでいたため、2001年から走行制御装置をIGBT素子を使用した新しいVVVFインバータに交換し、同時に車体の修繕と自動放送装置の更新を行いました。
現状
現在も全車が山口線で西武ドーム、西武遊園地を相互に行き来するためのアクセス列車として多くの乗客に使用されています。
走行音
録音区間:遊園地西~西武遊園地(お持ち帰り)
フォトギャラリー
画像をクリックすると拡大できます。
西武球場前駅にて
先頭部分側面
車体下部のゴムタイヤ
車内