100系新幹線
概要
国鉄が0系に続き第2世代の東海道・山陽新幹線向け新幹線車両として導入した車両です。
国鉄の車両、および新幹線車両として初めて2階建て車両を導入した形式でもあります。
車体は耐候性鋼を使用し、屋根部分はコルゲートステンレス鋼の一体構造となり、0系より若干の軽量化を図っています。
先頭部形状は「団子鼻」と呼ばれた丸みを帯びた0系とは一転して、シャープなデザインになり、側面の窓ガラスも大型のものとし眺望を確保しています。
登場時の塗装は0系よりも明るい白3号に窓まわりを青20号とされましたが、0系から変更された理由はより汚れが目立ちやすい色であるため「車両をきちんと清掃する」意識を職員に持たせる意図があり、本形式を国鉄改革の象徴と位置づけていたためです。
車内は「アットホームな車内の雰囲気」を重視したものとなっており、一例として壁には布ベースのフィルムシートが貼られ、金属色が見えないようにねじを隠す工夫がされています。
一方で、このフィルムシートは汚損時に交換の手間がかかるという問題があり、新幹線では本形式が唯一の採用例となりました。
座席は普通車では2+3列配置、グリーン車では2+2列配置となり、普通車の3人がけ席については0系では回転・リクライニングが出来なかったのに対し、本形式では回転・リクライニング可能となり、更にリクライニングの角度も拡大されました。
走行機器は東北・上越新幹線向けに開発されていた200系をベースにコストパフォマンスを高めたものとなっており、0系よりも高出力なモーターを搭載することで、16両編成ではそのうちの4両を付随車とすることができ、2階建て車両導入を実現させる要素の1つとなりました。
制御装置は0系のタップ制御に代わり、半導体を使用して回路の切り替えを行うサイリスタ位相制御となり、これを用いて定格230kWのモーターを制御します。
ブレーキは200系と同じく発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、高速域では発電ブレーキを使用し、空気ブレーキは補助的な使用とし、25km/h以下から停止までは空気ブレーキのみを使用します。
パンタグラフは登場時はユニットごとに必要で、16両編成では6基設置されていましたが、送電設備側の対応が終わり、特高圧引通線を設置したことから、3基に半減させることに成功しています。
最高速度は220km/h(後述の100N系のみ230km/h)となっており、0系と比べると僅かな速度向上に留まっていますが、これはスピードよりもサービス面でも向上を重視したためです。
本形式最大の特徴とも言える2階建て車両については、眺望の良い2階をグリーン席・食堂車に、1階は普通車・カフェテリア・個室などに割り当てています。
編成は国鉄時代に製造されたX編成(16両2階建てあり)、「こだま」ように暫定的に投入された暫定G編成(12両・2階建てなし)、JR東海が製造されたG編成(100'系)、JR西日本が製造したV編成(100N系)、V編成を短編成化したK編成(6両)、P編成(4両)といったバリエーションがあり、その中でも100N系とも呼ばれるV編成についてはJR西日本が新設計した車両であり、書類上は100系とは別形式として扱われ、最高速度270km/hを見据えた走行性能が与えられ、営業最高速度も他より10km/h早い230km/hとなりました。
なお、270km/hでの走行は試験こそ行われ、277.2km/hを達成していますが、騒音の環境基準を満たせないことが分かり、最高速度は230km/hのままとなりました。
運用としては東海道・山陽新幹線の主力車種として活躍し、更にV編成を使用した「ひかり」は「グランドひかり」という独自の愛称が設定され、東京~博多間の長距離を運行することから2階建て車両を4両連結し、G編成では省略された食堂車も設定するなど、特別な扱いを受けていました。
しかし、300系・500系・700系といった後継車種が登場してくると性能面で劣る本形式は徐々に活躍の幅を減らしていき、まず東海道新幹線から撤退し、山陽新幹線でも晩年は「こだま」としての余生を送り、ついには引退となりました。
歴史
1985年10月1日に運用が開始され、東海道・山陽新幹線「ひかり」を中心に活躍しました。
国鉄分割民営化を経た1988年3月13日にはG編成が、1989年3月11日はV編成が登場しました。
2003年に東海道新幹線からは撤退し、2004年1月22日の「こだま651号」をもって16両編成の本形式の運用は終了しました。
以後は2000年~2005年にかけて改造されたK編成・P編成のみが残る状態となりましたが、それもN700系導入に伴う500系の「こだま」転用や九州新幹線博多延伸開業に合わせてN700系7000・8000番台が導入されるのに伴う700系7000番台の「こだま」転用を受けて本形式を300系と同時に引退させることが決まり、2012年3月17日ダイヤ改正をもって本形式全ての運用が終了しました。
なお、本形式のうちの1両である122-5003がしばらく車籍を残された状態で博多総合車両所にて保存されていましたが、京都鉄道博物館での展示のため移送されるのに合わせて車籍も抹消され、書類上も本形式は消滅形式となりました。
現状
全車引退済みであり、走行可能な車両は現存しません。
保存車両としては「リニア・鉄道館」(名古屋市)、「京都鉄道博物館」(京都市)にて1両ずつ保存・展示されている他、近畿車輛にて外観のみ保存・公開されています。
走行音
録音区間:新下関~小倉(こだま827号)(お持ち帰り)
走行線区(特記無い場合は全線)
廃形式につき省略
フォトギャラリー
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リバイバルされた初代塗装
夜の100系2本並び
JR西日本によるリニューアル塗装
ドア
LEDによる行先表示器
車内
車いす対応の一人がけ座席
通常の2人掛け座席
座席テーブル
車端部テーブル
肘掛け灰皿(蓋閉め)
肘掛け灰皿(蓋開け)
窓ガラスと日除けカーテン
車内案内表示器
客室扉
デッキ
2階建て車両(イベントで展示)
ビュッフェ車内(リニア・鉄道館蔵)
ビュッフェテーブル(リニア・鉄道館蔵)
食堂車厨房(リニア・鉄道館蔵)
食堂車通路(リニア・鉄道館蔵)