117系電車
概要
国鉄が京阪神地区を走っていた新快速向けの車両として開発した直流近郊型電車です。
それまで使用されていた153系は本来急行用の車両であり、乗り心地や設備面では優れていたもののラッシュ時の円滑な乗り降りには向かず、更に固定クロスシートが競合する阪急電鉄や京阪電気鉄道の車両に比べて見劣りするといった問題もあり、これに代わる車両として本形式が開発されました。
そこで本形式では、両開き2ドアの転換クロスシートとして、円滑な乗り降りと快適性を両立させました。
愛称としては「シティライナー」があり、名古屋地区への導入に際しては「東海ライナー」の愛称もありました。
車体は側面から見ると2ドア転換クロスシート構造の先駆けとなったキハ66・67形に類似しており、前面形状は流線型としつつ高運転台構造とした独自のものとなっています。
前述のように座席は転換クロスシートとなっており、壁面は木目調でつり革は設置されないなど、近郊型電車としては異例の高級感のある車内となりました。
走行機器は既存形式の標準品を多用していますが、新快速での運用を考慮して最高速度が110km/hとされたことから上位機種の部品を使用しています。
制御装置は抵抗制御で、113系などの近郊型電車でも使われたMT54Dモーター(定格120kW)を搭載しています。
台車は空気ばねを搭載したものを使用しており、113系よりも乗り心地の向上が図られており、他の近郊型電車とは一線を画す車両でした。
編成は当初は6両編成が基本でしたが、後に4両編成や8両編成のバリエーションが登場しました。
最初に京阪神地区の新快速用として0番台が登場し、後に新快速増発用、並びに名古屋地区での快速増発用として100・200番台が登場しました。
そして、JR西日本とJR東海に引き継がれますが、後継車両が登場してくると第一線からは退くようになり、地方線区への転用が目立つようになりました。
そういった状況で地方線区でのラッシュ輸送に備えて転換クロスシートを一部ロングシートに変更するといった改造が施される車両も現れました。
JR東海では2013年に定期運用がなくなり、JR西日本でも2016年に下関地区から、2019年に紀勢本線・和歌山線から、2023年に岡山地区から撤退し、ついに定期運用終了となりました。
ただし、本形式を改造した特急「WEST EXPRESS 銀河」が2020年より運行されており、唯一現役で稼働する117系として活躍中です。
歴史
1980年1月22日に京阪神地区にて運用開始しました。
1982年3月10日には中京地区でも運用開始しました。
1987年の国鉄分割民営化により、JR東海とJR西日本に引き継がれました。
2013年3月15日をもってJR東海での定期運用がなくなり、2023年7月21日をもってJR西日本でも定期運用がなくなったことにより、本形式の定期運行は終了しました。
また、2020年9月11日より本形式を改造した「WEST EXPRESS 銀河」が運用開始しました。
現状
オリジナルの117系は全て廃車済みであり、定期運行は既にありませんが、「WEST EXPRESS 銀河」として週末を中心に改造された編成が活躍中です。
運行区間は時期により変動しますので、詳しくは公式サイトなどをご確認下さい。
保存車両としては「京都鉄道博物館」(京都市)にクハ117-1が、「リニア・鉄道館」(名古屋市)にクハ117-30が保存・展示されています。
走行線区(特記無い場合は全線)
JR西日本 |
WEST EXPRESS 銀河 |
東海道本線(京都~神戸)、大阪環状線(大阪~天王寺)、阪和線、紀勢本線(和歌山~新宮)、山陽本線(支線除く)、伯備線、山陰本線(伯耆大山~出雲市)
※運行区間は時期により変動あり
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2024.08.21現在
フォトギャラリー
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国鉄色
福知山色
瀬戸内地域統一色
同編成
同編成 先頭部分側面
和歌山地域統一色
前面部種別幕
京都・北近畿地区色
方向幕
パンタグラフ
車内
転換クロスシート
ロングシート
連結面扉
乗降扉(車内より)
JR西日本仕様の優先席・車内貫通路部分
車内車号プレート・機器動作ランプ
運転台
JR東海色
同編成
同編成の側面
同編成 先頭部分側面
同編成 所属表記