概要
当時発足したばかりのJR九州が、九州各地へ広がりつつあった高速道路網を走る高速バスなどの競合交通機関に対抗するために開発した交流特急型車両です。
JR九州は当系列を主要特急列車で運用する「フラグシップ」的存在として導入し、またJRグループとしても初の新系列車両であったため大いに注目されました。
車体デザインは南井健治氏が担当し、日立製作所、近畿車輛、JR九州小倉工場にて製造されました。
車両自体の開発計画は国鉄時代末期に始まったもので、その設計には国鉄時代末期に開発された新技術を多く取り入れていますが、車内設備にはJR九州独自のアイデアを採用しているため民営化による柔軟な発想を具現化したような車両となっています。
車体は先頭部分を普通鋼製にしたほかは軽量なステンレス製で、ドアとデッキを車体の真ん中に配置することで客室をA室とB室の2つに分けたため、需要に応じて柔軟にグリーン席と普通席、指定席と自由席、そして喫煙席と禁煙席の増減を行うことができます。
また、車体断面を従来の特急型車両よりも拡大し、客室窓も大型化されたほか、運転台を客室より低い位置に置いた結果、先頭車の客室からは前方の景色が見えるようになっていたりと、乗客が楽しめる車両にもなっています。
そして前述したように他の交通機関に対抗するため、ブレーキ性能を向上させた結果JRの在来線では初めて最高速度130km/hに対応した車両となりました。
車内にはJR九州の特急型電車としては初めてLED式車内案内表示機が設置されています。ちなみに、当形式には「ハイパーサルーン」という愛称が付けられています。
制御装置はサイリスタ連続位相制御で、直流整流子電動機を駆動します。
130km/h運転に対応するため、回生ブレーキの不足分を空気ブレーキで補う電空協調制御を採用し、これによりJRの在来線初となる130km/h運転を実現しました。
787系とともにJR九州の特急型車両として広範囲にわたって運用され、当系列はJR九州の電車特急が運行されている区間全てで定期列車として乗り入れた実績があります。
また、1989年には鉄道友の会の第29回ローレル賞を受賞しています。
歴史
1988年より運用が開始され「有明」として走り始めました。
当時まだ非電化であった豊肥本線の水前寺駅発着の便も熊本市中心部からの特急需要喚起を狙って設定され、それについては熊本~水前寺はDE10形ディーゼル機関車に牽引・推進されて運転するという変わった運用形態が取られていました。
その後は「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」「にちりん」にも広がりました。一時期は当形式が充当される便の列車名に「ハイパー」を冠していた時期もありました。
1989~1992年の短期間ではありますがカフェテリアの営業も行っており、集客力の向上に貢献しました。
従来の485系と比べると当系列の設備の方がはるかに上であったため、旅客が当系列の運用に集中し短編成で運転された際は大変な混雑になったという逸話があります。
787系の登場後、787系との格差を是正するため第1次リニューアル改造が施され、車体塗装の変更や車内設備の変更・更新が行われました。
また、885系が長崎方面の特急に投入されるのに合わせて一部編成が「みどり」「ハウステンボス」に転用されることになり、それに伴って第2次リニューアル改造が施されました。
その際に何両かの中間車を817系に似た貫通型先頭車に改造したほか、車体塗装と車内設備の再度の変更とエンブレムの取り付けが行われました。
この第2次リニューアル改造車が登場した2000年3月から2011年3月末までかもめ5両+ハウステンボス4両+みどり4両の13両編成で運転する3階建て列車の運用がありましたが、現在はかもめの併結運転を取りやめたためハウステンボス+みどりの8両編成に縮小しました。
2006年度に片側はみどり仕様の貫通型先頭車でありながら、もう片側は従来の非貫通先頭車かつ車体塗装は第1次リニューアルのときのままの編成が1本のみ登場しています(CM35編成)。
しかし、新幹線網の拡充などによって787系が余剰となってくると、本形式は787系に置き換えられる形で活躍の幅を減らしていき、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県内からは撤退し、福岡県、佐賀県、長崎県での運用となりました。
現状
全車が南福岡車両区に所属し、福岡県、佐賀県、長崎県を走る「きらめき」「みどり」「ハウステンボス」「かささぎ」として活躍中です。
走行音
録音区間:吉塚~博多(かいおう5号)(お持ち帰り)
走行線区(特記無い場合は全線)
JR九州 |
きらめき |
鹿児島本線(博多~門司港) |
みどり |
鹿児島本線(博多~鳥栖)、長崎本線(鳥栖~江北)、佐世保線 |
ハウステンボス |
鹿児島本線(博多~鳥栖)、長崎本線(鳥栖~江北)、佐世保線(江北~早岐)、大村線(早岐~ハウステンボス) |
かささぎ |
鹿児島本線(門司港~鳥栖)、長崎本線(鳥栖~肥前鹿島) |
2025.07.05
フォトギャラリー
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リニューアル編成 かもめ
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方向幕
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ハイパーサルーンのロゴ
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ドアに付くかもめのロゴ
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車体中央部のドア
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リニューアル編成のデッキ
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リニューアル編成の普通座席
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リニューアル編成の普通車車内
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ハウステンボス編成 非貫通先頭車
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同編成 貫通型先頭車
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ハウステンボスのロゴ(プレート式)
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ハウステンボスのロゴ(ステッカー式)
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ハウステンボス編成のデッキ
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ハウステンボス編成の普通座席1
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ハウステンボス編成の普通座席2
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ハウステンボス編成の普通車車内
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LED式車内案内表示機
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グリーン車車内
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グリーン座席
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みどり編成 非貫通先頭車
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みどり編成 貫通型先頭車
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LED方向幕
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みどりのロゴ
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みどりの車掌室付き中間車
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ハウステンボス新塗装(非貫通)
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ハウステンボス新塗装(貫通)
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みどりの車掌室付き中間車
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かつて存在した13両運転 二日市駅にて
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CM35編成 回送列車 南福岡駅にて
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かもめ編成とハウステンボス編成の併結作業