789系電車
概要
東北新幹線の八戸延伸に際して、それ以前に青函トンネルを介して本州と北海道の連絡列車として運転されていた特急「はつかり」と快速「海峡」の2系統を統合し、本州と北海道との鉄道輸送改善を行うために新設された、函館~青森・八戸を結ぶ「スーパー白鳥」に投入するためにJR北海道が開発した特急型車両です。
789系開発前の時点では国鉄時代に北海道専用特急型車両として製造された781系を本州と北海道との連絡輸送に転用する案もありましたが、検討の結果、青函トンネルの特殊な設備と環境に対応するために新形式の特急型車両を開発することが得策だと判断され、当系列の0番台が登場しました。
全長53.85kmに及ぶ海底トンネルである青函トンネルを通過するため、トンネル内の高湿度環境および高速走行に伴う騒音対策のために客室の気密性が高く設計されているほか、12‰の連続勾配を140km/hで走行できるようMT比(電動車比率)を高くして列車全体の出力確保を図り、万が一電動車の1組が故障した場合でも青函トンネルから脱出できる能力を持ち、加えて下り勾配での走行を考慮して抑速ブレーキが搭載されるなど、青函トンネルの特殊な環境に対応できる設備を備えた車両になっています。
モーターは定格230kWのN-MT731形かご形三相誘導電動機で、IGBT素子によるVVVFインバータ制御でこれを制御します。
ブレーキは回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキです。
車体構造はキハ261系と同一で、基本的に軽量なステンレス製ですが先頭部分のみ普通鋼製とされ、車体断面もキハ261系と共通です。
ただしデザインは大きく変更されており、ライトグリーン中心の塗装で、前照灯や補助灯の位置もキハ261系とは異なっています。
旅客需要の増減に合わせて車両の増結・切り離しを容易に行うため、先頭車には貫通扉が設置されており、中間車で編成の端となる車両にも簡易運転台も設けられています。
そして正面の愛称表示機は従来の幕式のままですが、側面の方向幕(行先表示機)はLED式のものになっています。
編成は増結による増減もありますが、2両ないし3両単位で組成されており、組み合わせにより5両、6両、8両など、需要に応じた様々な編成が組めます。
また、1両はグリーン車となっています。
2007年には道央エリアで当時「ライラック」などに使用されていた781系の置換え用として、固定5両編成で一部仕様を変更した1000番台が製作されました。
1000番台は車両の増結や切り離しを行わない前提で製造されているため、0番台で設置されていた貫通扉は廃止され、代わりに先頭部分側面に乗務員扉を設置しています。
塗装はシルバー基調のものに変更され、愛称表示機と側面の方向幕(行先表示機)もどちらもLED式とされました。
車内設備も0番台とは異なり、編成中に1両のuシートが設定されていますがグリーン車の設定がないのでモノクラス編成となっています。
ほかにもオストメイト対応の多目的トイレを備え、車販準備室の代わりに自動販売機が設けられるといった変更点があります。
登場から長らく、0番台は「スーパー白鳥」、1000番台は「スーパーカムイ」とこれと直通する「エアポート」、間合い運用として「ホームライナー」などで活躍していましたが、2017年の北海道新幹線開業で「スーパー白鳥」が廃止されると0番台も道央地区に転用され、札幌~旭川間の電車による特急が本形式に統一されるとともに、0番台を使用する列車は「ライラック」、1000番台を使用する列車は「カムイ」と愛称を区別されることとなりました。
これは、0番台と1000番台ではグリーン車の有無など設備面に差があることから、これを利用者に分かりやすくする意味があります。
歴史
2002年の末に0番台が「スーパー白鳥」に投入されましたが、後に輸送力増強のため車両が増備されました。
東北新幹線の全線開業以前には走行区間が本州内のみであった「つがる」の運用もありましたが、現在は撤退しています。
1000番台は0番台の投入から5年後の2007年に投入されました。
2010年1月に1000番台が踏切でダンプカーと衝突し、1編成が丸ごと脱線し大破する事故が起こりましたが、代替編成の新製はされていません。
この事故の対策として、小窓があり前面展望が可能なため人気があった先頭車の貫通路部分は立ち入り禁止とされました。
2016年には「スーパーカムイ」と「エアポート」の直通廃止に伴い、本形式の「エアポート」運用は終了しました。
2017年には北海道新幹線開業に伴う「スーパー白鳥」の廃止で0番台は道央地区に転用され、「ライラック」として運用されるようになりました。
また、従来の「スーパーカムイ」は「カムイ」と改称され、本形式の1000番台が充当されるようになりました。
現状
0番台は「ライラック」の全列車として、1000番台は「カムイ」の全列車と「すずらん」の一部列車として活躍中です。
走行音
0番台
録音区間:函館~五稜郭(スーパー白鳥98号)(お持ち帰り)
1000番台
録音区間:千歳~南千歳(エアポート172号)(お持ち帰り)
走行線区(特記無い場合は全線)
0番台 |
ライラック |
函館本線(札幌~旭川) |
1000番台 |
カムイ |
函館本線(札幌~旭川) |
すずらん |
函館本線(札幌~白石)、千歳線、室蘭本線(沼ノ端~室蘭) |
2025.07.08現在
フォトギャラリー
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0番台 スーパー白鳥 木古内駅にて
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連結部分とドア
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0番台のロゴ
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LED式方向幕
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デッキ端部の車両間連絡ドア
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0番台の車内1
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0番台の車内2
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座席
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座席備付テーブル裏に貼付の青函トンネル通過予定表
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車内ドア
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車内端部のミニテーブル
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車内LED案内表示機
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1000番台の外観
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1000番台のヘッドマーク
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1000番台の行先表示
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1000番台のデッキ
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1000番台のドア(車内から)
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1000番台の客室ドア
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1000番台の車内
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1000番台の座席