キハ181系気動車
概要
国鉄がキハ80系の後継として開発した特急型気動車です。
キハ80系は出力不足のため、勾配線区での使用が困難であったことや電化区間での電車特急との速度差、更には故障率の高さなどが問題だったため、それらの点を改良したのが本形式というわけです。
キハ80系は接客設備は当時の水準としても十分なものでしたが、非力なDMH17H系ディーゼルエンジンを採用したことで出力不足が顕著で、エンジンを1両あたり2基搭載することで対処していましたが、サービス電源用の発電エンジンを搭載する車両では走行用エンジンは1基しか搭載できず、加えて高速性能を重視した歯車比としたため、勾配線区での均衡速度が低下してしまうことや、DMH17系エンジンは熱効率が低く、全力運転を続けるとオーバーヒートを起こしたり故障するリスクが高いという欠点がありましたが、国鉄ではこの弱点を克服すべく、DMH17系を基本としつつもピストン径を10mm拡大した新設計のシリンダブロックを採用し、ターボチャージャーも併用する6気筒ないし12気筒のエンジンとすることで大出力化を実現したDMF15HZA(6気筒)、DML30HSA(12気筒)という新設計のエンジンを開発しました。
本形式ではDML30HSBを改良したDML30HSCを各車1基搭載し、1基あたりの定格出力は500PSにも達しました。
車体はキハ80系をベースとしたものになっており、外観はよく似ていますが、エンジンの高出力化の結果として、冷却系を強化する必要に迫られ、屋根上に大型の冷却器を設置しているといった違いがあります。
車内は普通車では回転クロスシートを配置し、モケット張りの座席となり、当時の特急型電車に準じた設備となりました。
走行機器は前述のDML30HSCを採用しており、これに液体式変速機のDW4C、DW4Eを組み合わせています。
本形式では大出力ゆえに空転対策として1台車2軸駆動となっています。
変速-直結段の切り替えは通常45km/h程度で行いますが、本形式では85km/h程度まで変速段を用いる構成となっており、直結段への切り替えは自動となっています。
しかし、低速時では変速機の滑りが大きくなり、変速機への負担が大きく故障が頻発するという問題も招きました。
また、高出力化に伴う問題として排熱問題がありますが、本形式ではベルト駆動のファンによる強制風冷ではエンジン出力の損失や騒音・振動が発生することを嫌い、大型の自然放熱器をほぼ全ての屋根上に配置しています。
この構造は単純で低コストでもありましたが、一方で冷却水量が増え、これによる車体重量の増加、及び重心が高くなるという問題もありました。
更に変速段を長時間使用し、低速走行故に走行風が十分にあたらない条件が重なると放熱能力の不足が見られることもあり、これが原因のエンジン故障も見られました。
最高速度は性能としては120km/hですが、当初はキハ80系などと共通運用されたことや、線路側の規格の問題で最高速度95km/hとされました。
それでも勾配線区での均衡速度を向上したことで所要時間短縮を果たしました。
歴史
1968年に運用開始し、中央西線の特急「しなの」を皮切りに奥羽本線の特急「つばさ」へも投入されますが、スピードアップを果たした功績だけでなく、新開発のメカニズムを用いていたこともあり故障が多発していました。
後に改良されていくものの、一時はダイヤ維持すら危ぶまれる事態となりました。
中央西線や奥羽本線が電化されると本形式は伯備線の「やくも」を中心に山陰・四国地区へ転用されていきました。
しかし、伯備線も電化され「やくも」からも撤退すると、キハ80系の運用が残っていた「あさしお」「はまかぜ」「まつかぜ」へ転用されました。
一方、四国では山陽新幹線の岡山開業に合わせて四国で初めての特急となる「しおかぜ」と「南風」が新設され、これに本形式が投入されました。
1987年の国鉄分割民営化ではJR西日本とJR四国に継承されました。
JR西日本では発足当時「あさしお」「はまかぜ」「おき」「いそかぜ」にて本形式が運用されており、1988年には「くにびき」が新設され、更に1994年には智頭急行線開業と共に新設された「はくと」にも投入されました。
1997年にはHOT7000系の増備が進むと「はくと」からは撤退し、「いなば」に転用されました。
1996年からは山陰本線の京都口が電化され、北近畿方面への特急の電車化が進むと本形式の廃車が始まりました。
2001年にはキハ187系の増備により「おき」「くにびき」から撤退しました。
2003年には「いなば」から撤退し2005年に「いそかぜ」が廃止されると、本形式を定期運用する列車は「はまかぜ」のみとなりました。
2010年には「はまかぜ」にキハ189系が投入されると、本形式は引退となり、同年の2月に実施されたツアー形式のさよなら運転をもって引退となりました。
なお、その後2012年までにミャンマーへ譲渡されています。
JR四国では、発足翌年の1988年に瀬戸大橋線が開業すると「しおかぜ」「南風」が岡山駅発着となり、需要増大に伴いJR西日本から本形式を借り受けて運行するほどでした。
しかし、1990年には2000系の登場もあって「南風」からは撤退し、1993年までに定期運用はなくなりました。
本年中に臨時列車としても運用がなくなり、全車廃車となりました。
現状
全車引退済みで現存しません。
なお、保存車としてはキハ181-1が愛知県名古屋市の「リニア・鉄道館」にて、キハ181-12が岡山県津山市の「津山まなびの鉄道館」にて保存・展示されています。
走行音
録音区間:三ノ宮~神戸(はまかぜ1号)(お持ち帰り)
走行線区(特記無い場合は全線)
廃形式につき走行線区は省略
フォトギャラリー
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リニューアル塗装
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道トレインマーク
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方向幕
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同車番表記(車外側面)
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同JRロゴと種別札
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車内
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国鉄色(津山まなびの鉄道館蔵)