キハ261系気動車
概要
JR北海道が宗谷本線・石勝線の特急列車高速化のために導入した特急型気動車です。
当形式以前に「スーパー北斗」向けのキハ281系、「スーパーおおぞら」向けのキハ283系がありましたが、これらに比べて比較的輸送量の少ない宗谷本線へ投入するにあたり、コストを抑えるために制御付き自然振り子ではなくキハ201系で実績のあった車体傾斜装置を搭載することとし、既存的な構造もキハ201系をベースとしています。
本形式投入で宗谷本線でも最高速度130km/hでの運転が実現し、車体傾斜装置により曲線通過速度も向上したため、札幌~稚内間は従来の急行「宗谷」に比べて50分程度短縮されました。
番台区分としては初期に登場した宗谷本線向けの0番台、増備車かつ改良型の1000番台、キハ183系の「ノースレインボーエクスプレス」「クリスタルエクスプレス」といったリゾート車両の後継として登場した5000番台の3種類があります。
0番台は一番最初に登場し、宗谷本線の新たな特急列車「スーパー宗谷」の運行開始に合わせて本形式が開発されました。
宗谷本線の一部区間の高速化事業を担った第三セクター「北海道高速鉄道開発」がJR北海道に委託する形で開発が行われ、初期グループについては「北海道高速鉄道開発」が保有し、JR北海道へ有償リースする形で運行が行われました。
本形式ではコストカットも重要なテーマであり、車体傾斜装置は振り子式ではなく空気ばね式のものとし、キハ201系と同等の走行システムとなりました。
車体は軽量ステンレス製で、先頭部のみ普通鋼製です。
車体傾斜装置を搭載することから、傾斜時に建築限界に抵触しないように車体の上半分が台形状にすぼまる形状になっています。
先頭部のデザインは先行して登場していたキハ281系・キハ283系に準ずる高運転台構造となり、貫通扉を設けています。
スカートは排雪機能ならびにエゾシカとの衝突を想定した構造を採用しています。
乗降扉は特急形では一般的な引き戸式で、戸袋への氷雪の侵入や凍結による動作不良を歩削ぐため、ドアレールにヒーターを備え、「押さえ式シリンダー式ドア」を採用することで気密性を高めています。
これを先頭車は片側2箇所、中間車は片側1箇所設けています。
走行機器はエンジンに定格460PSのN-DMF13HZH形ディーゼルエンジンを採用し、これに変速1段・直結4段のN-DW16A形液体式変速機を組み合わせます。
本形式のベースとなったキハ201系に比べると、エンジン1基あたりの出力を向上させる代わり、キハ201系では全車にエンジン2基搭載だったのに対して、本形式では一部にエンジン1基の車両を混ぜることでコスト削減を図っています。
ブレーキは電気指令式空気ブレーキで、機関ブレーキと排気ブレーキを併用します。
制輪子には苗穂工場製の特殊鋳鉄制輪子を採用しており、これにより氷結レール面であっても最高速度130km/hからの600m以内での停止を可能にしています。
最高速度は130km/hであり、加速度も60km/hまでは平均2.2kkm/h/s、130km/hまででも1.2km/h/sと電車特急並の走行性能を確保しています。
車体傾斜装置は空気ばねを用いたもので、先頭車に搭載するセンサーでカーブを検出し、カーブ外側の空気ばねの内圧を高めることで車体を傾斜させる方式です。
最大で本則+25km/hでの曲線通過が可能であり、振り子式であるキハ281系・キハ283系の本則+30km/hに比べると劣るものの、車体構造の簡略化によるコストカットを実現しています。
なお、車体傾斜装置は2014年より使用停止されており、同年以降に増備された本形式では最初から車体傾斜装置を搭載してません。
車内は全車がリクライニングシートとなっており、普通車は2+2列、グリーン車は1+2列配置となっています。
なお、グリーン車は半室のみとなっており、1両のみグリーン車と普通車の合造車で、それ以外は普通車となっています。
編成は2両単位のユニットとなっており、先頭車+中間車で1ユニットとなり、これを2つ繋げた4両編成が最小編成となります。
続いて1000番台は2006年~2022年にかけて製造されたグループで、改良型という位置づけでもあり、0番台とは併結できません。
目的としては根室本線・石勝線の高速化のためにキハ283系が投入されたものの、「とかち」についてはキハ183系の運用が残り、全列車の高速化には至っていなかったことから、本形式を投入し「とかち」全列車の高速化を実現することがありました。
この目的としては1・2次車が該当し、走行機器類は0番台と同様であるものの、車体は789系電車をベースにしています。
エンジンは全車に2基搭載に変更され、加速性能と登坂性能を向上させた他、エンジン自体も有害排出物の低減を図った定格460PSのN-DMF13HZJ形ディーゼルエンジンに変更されています。
ブレーキや変速機は0番台と共通です。
編成は2両1ユニットは0番台とおないですが、中間に1両単位で増結車を挿入可能となり、編成の柔軟性が上がりました。
また、0番台では半室だったグリーン車が、1000番台の1・2次車では1両まるごとグリーン車となりました。
1000番台3次車は「とかち」にいまだ残っていたキハ183系の置き換え用に登場したもので、おおむね1・2次車に準じますが、座席のグレードアップ化などの変更点があります。
1000番台4次車は石勝線脱線火災事故によりキハ283系6両が廃車となったことで車両不足が発生したことを受けて増備されたもので、当時は既に新型特急型気動車の計画がありましたが、早急な投入が求められたため、新設計が必要ない本形式の増備となりました。
細部の違いはありますが、おおむね1~3次車に準ずる仕様です。
続いて5次車は北海道新幹線の開業に伴う「スーパー北斗」の増発を目的としています。
5次車登場の頃には車体傾斜装置の使用が停止されていたことから、5次車では最初から搭載せず、今までは用意されていた電車併結総括制御の準備工事も省略されました。
また、火災事故を受けて、燃料タンクのステンレス化、外殻の2重化、プロテクター取り付けといった安全対策も強化されました。
その他、座席のグレードアップ化、室内灯のLED化、行先表示器のセレクトカラーLED化といった変更点もあります。
6次車はJR北海道で開発が進められていた新型特急型気動車のキハ285系がJR北海道を取り巻く情勢を受けて開発中止となったことから、当面の老朽化した特急型車両の置き換えを本形式の増備で行うこととなったため登場しました。
大きな変更点は外観が新デザインとなった他、先頭部のトレインマーク表示部がフルカラーLED式となりました。
7次車はキハ281系やキハ283系の置き換え用として製造されたグループで、グリーン車の座席の変更、インバウンド需要の増加を受けて普通車に大型荷物置き場を設置などの変更点があります。
7次車まで増備が進み、最終的にJR北海道の特急形気動車は本形式と「オホーツク」系統に残ったキハ283系の2車種に集約され、JR北海道の汎用特急型車両といってもいいほど幅広い活躍を見せるとともに、総数は178両に達し、JRグループの特急形気動車としては最大両数のグループとなりました。
5000番台はキハ183系5100番台「クリスタルエクスプレス」や同5200番台「ノースレインボーエクスプレス」が引退することを受けて、これらの代替として登場したグループで、「リゾート車両」という位置づけになっています。
イベント列車や観光列車向けではありますが、それ専用であるわけではなく、一般列車の代走や繁忙期の増発便にも充当されるなど、「多目的特急車両」と称しています。
「はまなす編成」と「ラベンダー編成」の2編成が製造され、「はまなす編成」については一部費用を北海道が負担しており、「ラベンダー編成」は後に「北海道高速鉄道開発」が取得・保有し、JR北海道へ無償貸与する形を取っています。
基本設計は1000番台7次車と同一とされているものの、外観デザインや車内設備で差別化をしています。
いずれも5両固定編成で、全車普通車でグリーン車は設けていませんが、ラウンジを設けており、これをフリースペースとして使用します。
フリースペースはボックス席と窓向きのカウンター席があり、観光列車やイベント列車ではイベントスペースとしても使用されます。
普通車は1000番台と同様であるものの、座席のクッションを変更した他、コンセントを設置、モケットの色の変更の他、荷物置き場の増設といった変更点があります。
歴史
2000年3月11日の改正より0番台が「スーパー宗谷」としてデビューしました。
2006年には1000番台が投入され、2007年より石勝線の「スーパーとかち」にも投入されました。
2009年には「とかち」の全列車が本形式とキハ283系に統一され、石勝線系統の高速化が完了しました。
2014年7月より車体傾斜装置の使用は停止されると共に最高速度を120km/hに減速することとなり、若干所要時間が伸びることとなりました。
2016年より「スーパー北斗」に本形式が投入されました。
2017年には宗谷本線の特急が再編され、「宗谷」と「サロベツ」となり、宗谷本線の特急が本形式で統一されました。
2018年には「スーパー北斗」に本形式が増備され、キハ183系を置き換え、函館方面の高速化も完了しました。
2020年9月に5000番台「はまなす編成」が一般公開され、同年10月に2日間限定で「オホーツク」「大雪」に充当されました。
2021年4月に「ラベンダー編成」が一般公開され、5月の「HOKKAIDO LOVE! FURANO号」で営業運転を開始しました。
2022年3月ダイヤ改正をもってキハ283系が「おおぞら」から撤退し、石勝線・根室本線系統の特急が本形式に統一されました。
また、同年10月1日より「北斗」のキハ281系の撤退に伴い、全列車が本形式による運行となり、函館方面の特急が本形式に統一されました。
現状
0番台は「宗谷」「サロベツ」、1000番台は「北斗」「とかち」「おおぞら」、及び間合い運用の「ホームライナー」として活躍中です。
5000番台は臨時列車を中心に運用される他、一般の特急列車の代走として走る機会もあります。
走行音
0番台
録音区間:砂川~滝川(宗谷)(お持ち帰り)
1000番台
録音区間:新札幌~札幌(おおぞら12号)(お持ち帰り)
5000番台
録音区間:中富良野~富良野(臨時快速)(お持ち帰り)
走行線区(特記なき場合は全線)
| 0番台 |
宗谷 |
函館本線(札幌~旭川)、宗谷本線 |
| サロベツ |
宗谷本線 |
| 1000番台 |
北斗 |
函館本線(函館~長万部・白石~札幌)、室蘭本線(長万部~沼ノ端)、千歳線 |
| おおぞら |
函館本線(札幌~白石)、千歳線(白石~南千歳)、石勝線、根室本線(新得~釧路) |
| とかち |
函館本線(札幌~白石)、千歳線(白石~南千歳)、石勝線、根室本線(新得~帯広) |
| ホームライナー |
函館本線(手稲~札幌) |
2025.08.29現在
フォトギャラリー
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0番台
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同ヘッドマーク
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同スカート部
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同先頭部のロゴ
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同方向幕
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同行先表示器(LED化後)
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同乗降扉
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同車番
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同車内(普通車)
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同座席
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同車内案内表示器
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1000番台(旧塗装)
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1000番台(新塗装)
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同先頭部表示
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同先頭部表示(LED化後)
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同乗務員扉
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同行先表示器
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同車端部表記
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同車端部銘板
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同乗降扉(車外より)
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同乗降扉(車内より)
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同乗降ステップ
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同普通車車内
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同座席(2人がけ)
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同座席(1人がけ)
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同座席テーブル(格納時)
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同車端部テーブル
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同車内案内表示器
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同大型荷物置き場
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同荷物置き場
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同デッキ
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同くずもの入れ
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同グリーン車車内
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同座席(2人がけ)
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同座席(1人がけ)
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5000番台(ラベンダー編成)
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側面ロゴ
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同普通車車内
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同座席
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同座席背面テーブル(展開時)
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同座席肘掛けテーブル(展開時)
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同車端部テーブル
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同座席コンセント
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同窓ガラスブラインド
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同荷物フック
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同ラウンジ車内
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同ラウンジ座席(ボックス)
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同ラウンジ座席(窓向き)
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同コンセント(格納時)