E3系新幹線
概要
JR東日本が秋田新幹線向けに開発した新幹線車両です。
400系同様に在来線と新幹線を直通運転するため、軌間は新幹線規格1435mmですが、車体そのものの規格は在来線の建築限界に準じたものになっています。
このため、ミニ新幹線と呼ばれることもあります。新幹線区間の駅ではホームとの隙間が大きくなるため、乗降中はステップが出るようになっています。
在来線区間ではカーブや踏切の存在のため最高速度は130km/hに制限されますが、新幹線区間では275km/h走行が可能です。
大きく4種類に分類でき、秋田新幹線向けの0番台、山形新幹線向けの1000番台、400系置換え用に増備された2000番台、「のってたのしい列車」として改造された700番台があります。
車体は軽量なアルミニウム合金製で、400系より1両あたり2トンの軽量化を実現しています。
デザインは「GKインダストリアルデザイン」が担当し、製造は川崎重工業と東急車輛製造が担当しました。
最初は秋田新幹線向けに投入され、R編成については第三セクター「秋田新幹線車両保有株式会社」が所有しており、JR東日本へリースする形をとっていましたが、2010年のリース期間満了に伴い同社は解散し、以後はJR東日本が保有しています。
走行機器は初期車がGTO素子、後期車がIGBT素子によるVVVFインバータ制御で、定格300kWのモーターを駆動します。
新幹線と在来線を直通する都合上、25000ボルトと20000ボルトの2つの電圧に対応する複電圧車両となっています。
また、保安装置も新幹線用のATCと、在来線用のATSの両方を搭載しています。
編成は0番台が最初は5両編成で登場し、利用が好調だったことから後に中間車を新製して6両編成となりました。
1000番台・2000番台は最初から7両編成で投入されました。
1000番台については0番台から塗装を変更した程度の変更ですが、2000番台では一部座席へのコンセントの追加、内装ではロールカーテンの生地や座席モケットを変更、ドアチャイム・大型フルカラーLEDによる車内案内表示装置、非常通報装置・AEDといった設備が追加されました。
0番台については長らく秋田新幹線「こまち」の運用を一手に引き受けていましたが、後継となるE6系の登場で置き換えが始まり秋田新幹線からは撤退し、東北新幹線内での付属編成的な扱いでわずかに残っていましたが、それも全車引退済みです。
一方で、0番台のうち2編成が「のってたのしい列車」(観光列車)の「現美新幹線」と「とれいゆ」用に改造され、700番台に編入されました。
1000番台・2000番台については山形新幹線で引き続き使用されていましたが、こちらも後継となるE8系の増備で置き換えが進行中です。
ここからは本形式を改造した「のってたのしい列車」についての解説をします。
「のってたのしい列車」となった700番台は2編成あり、それぞれ「現美新幹線」と「とれいゆ」という愛称がありました。
「現美新幹線」は現代美術の略である現美を列車名に冠し、「走る美術館」さながらに車内でアート作品を楽しめる列車となっていました。
外観デザインは蜷川実花氏が担当し、黒を基調に長岡の花火を描いたものとなっていました。
内装は「ジェイアール東日本建築設計事務所」が担当し、号車ごとに担当アーティストが決められ、絵画・立体作品・彫刻・写真・映像作品といったアート作品が展示される他、車内にはキッズスペースやカフェも設置されていました。
11号車は改造元の0番台のグリーン車をベースに松本尚氏のデザインとなっており、指定席として発売されてました。
12号車~16号車には休憩用のソファを除いて座席はなく、展示作品を楽しむことを趣旨とした車両になっており、自由席扱いとなっていました。
12号車は平面をテーマとし小牟田悠介氏の作品が展示されていました。
13号車はカフェとキッズスペースで、カフェは古武家賢太郎氏、キッズスペースはアートユニット「パラモデル」がデザインしました。
14号車は写真がテーマで、石川直樹氏の作品が展示されていました。
15号車は立体がテーマで、荒神明香氏の作品が展示されていました。
16号車は映像がテーマで、初期(2018年3月まで)はブライアン・アルフレッド氏の、後期(2018年3月から)はAKI INOMATA氏の作品が展示されていました。
運行は上越新幹線「とき」として越後湯沢~新潟間で土日祝を中心に運行され、登場からしばらくは全車指定席であり、11号車の座席車以外は旅行商品扱いでの発売でしたが、以後は11号車のみ指定席でそれ以外は自由席扱いとなり、乗車する区間の乗車券と自由席特急券があれば乗車できました。
2020年12月19日に定期運行を終了し、同編成もまもなく廃車となりましたが、本編成の座席などが沿線の各駅にて展示されています。
続いて「とれいゆ」についてですが、「とれいゆ」は山形ディスティネーションキャンペーンに併せて導入され、新幹線車両を使用した観光列車の第1弾でもありました。
列車名は列車を意味する英単語の「トレイン」と、太陽を意味するフランス語の「ソレイユ」を組み合わせた造語で、車内で足湯を楽しめることが最大の売りでした。
外観塗装は月山をモチーフにした緑色を中心に、最上川wモチーフにした青色、蔵王をモチーフとした白色を全体的に配していて、デザインは奥山清行氏が担当しました。
6両編成のうち、11~14号車が普通車指定席となっていて、11号車は0番台のグリーン車をそのまま使用した座席となっており、それ以外はお座敷席となっています。
15号車は「湯上りラウンジ」と称する掘りごたつタイプの座席となっていて、バーカウンターも設置されていました。
16号車は足湯と更衣室となっており、足湯を利用するには「びゅう」の旅行商品に申し込むか、空きがあれば当日アテンダントより足湯利用券を購入することもでも利用できました。
歴史
1995年3月に量産先行車が登場し、1997年の秋田新幹線開業に合わせて営業運転を開始しました。
1999年には山形新幹線の新庄延伸開業に合わせた増備として1000番台が登場しました。
2008年には400系置き換え用として2000番台が登場しました。
2013年6月より秋田新幹線向けの新型車両としてE6系が登場し、0番台の置き換えが始まりました。
2014年3月ダイヤ改正をもって本形式は秋田新幹線からは撤退し、0番台の一部が東北新幹線での付属編成的な運用として残りました。
2014年7月19日には0番台を改造した700番台「とれいゆ」が登場し、新幹線車両では初の観光列車が誕生しました。
2016年4月49日には同じく0番台を改造した700番台「現美新幹線」が登場しました。
2020年10月より新型コロナウイルス感染症の流行による編成短縮により、付属編成的に使われていた0番台も運用を終了し、翌2021年に残った0番台は廃車され、0番台は消滅となりました。
また、2020年12月19日をもって「現美新幹線」の定期運行が終了し、翌日開催された旅行商品専用列車でのラストランをもって運行終了となり、翌2021年3月1日付で廃車となりました。
2022年3月6日をもって「とれいゆ」も運行終了となり、廃車となり、700番台は消滅となりました。
2024年3月ダイヤ改正では、山形新幹線向けの新型車両E8系が登場し、1000番台については置き換わる形で運用終了、2000番台についても順次置き換えが進む予定です。
現状
山形新幹線「つばさ」の一部にて活躍中です。
走行音
0番台(GTO車)
録音区間:上野~東京(こまち20号)(お持ち帰り)
0番台(IGBT車)
録音区間:新花巻~北上(やまびこ60号)(お持ち帰り)
1000番台
録音区間:村山~さくらんぼ東根(つばさ18号)(お持ち帰り)
2000番台
録音区間:さくらんぼ東根~村山(つばさ131号)(お持ち帰り)
走行線区(特記無い場合は全線)
JR東日本 |
0番台 |
こまち |
東北新幹線(東京~盛岡)、田沢湖線、奥羽本線(大曲~秋田) |
はやて(増結用) |
東北新幹線 |
やまびこ(増結用) |
東北新幹線(東京~盛岡) |
なすの(増結用) |
東北新幹線(東京~郡山) |
1000番台 2000番台 |
つばさ |
東北新幹線(東京~福島)、奥羽本線(福島~新庄) |
フォトギャラリー
画像をクリックすると拡大できます。
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外観(0番台)
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外観(R編成)
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2000番台(旧つばさ塗装)
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外観(新つばさ塗装)
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行先表示器
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「こまち」のロゴ
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「つばさ」のロゴ
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台車
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ドアとステップ
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乗務員用ドア
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乗降用ステップ
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車内(0番台)
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座席(2000番台)
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車内電光掲示板
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車内コンセント
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フットレスト
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手元灯
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テーブル(車端部用)
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新つばさ塗装のロゴ
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とれいゆ(700番台)
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「とれいゆ」ロゴ
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とれいゆ11号車車内
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とれいゆ11号車座席
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「とれいゆ」手元灯
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「とれいゆ」ブラインド
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「とれいゆ」車内の天井
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「とれいゆ」お座敷席
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「とれいゆ」16号車ソファー
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「とれいゆ」湯上がりラウンジ
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「とれいゆ」足湯
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「とれいゆ」バーカウンター
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「とれいゆ」洗面台
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現美新幹線(700番台)
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「現美新幹線」ロゴ
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「現美新幹線」側面1
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「現美新幹線」側面2
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「現美新幹線」乗降口ステップ
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「現美新幹線」11号車車内
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「現美新幹線」11号車座席
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「現美新幹線」手元灯
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「現美新幹線」ブラインド
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「現美新幹線」車番(車内)
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「現美新幹線」デッキ
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「現美新幹線」荷物置き場
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「現美新幹線」12号車車内
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「現美新幹線」13号車キッズスペース
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「現美新幹線」13号車カフェ
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「現美新幹線」14号車車内
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「現美新幹線」15号車車内
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「現美新幹線」16号車車内
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「現美新幹線」非常通報装置
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「現美新幹線」公衆電話