大回り乗車とは

皆さんは「大回り乗車」という言葉を聞いたことがありますか?
最近はメディアでも取り上げられることが多くなって、鉄道ファンならずとも、内容は知らなくても聞いたことぐらいはあるという方が多いと思います。
このページではこの大回り乗車について解説していきます。
なお、このページで運賃を示す場合は、原則として紙の乗車券を購入した場合の運賃を示しています。ICカード乗車券や回数乗車券では金額が異なりますのでご注意下さい。

大回り乗車の概要

大回り乗車を端的に説明すると、「JRの大都市近郊区間の特例を利用して、あえて遠回りな経路を乗車する」ということになります。
大都市近郊区間?遠回り?と頭の中がはてなマークだらけという方もいると思いますが、これから細かく解説していきますので、今はそれでも大丈夫です。
具体例を上げると、例えば、東京駅から神田駅まで行く場合、通常ならば山手線内回りで1駅ですが、ここをあえて逆回りの外回り電車に乗って神田駅まで行くようなケースを大回り乗車といいます。
これをもっと遠回りして、東京駅から東海道本線、川崎駅から南武線、立川駅から中央線のように回っていくような場合もあります。

なんでこんなことができるのか

大回り乗車は、初乗り運賃で何百キロも列車に乗ることになるわけですが、普通に考えるとそんなことはいわゆるキセルに当たるのではないかと思われる人も多いかもしれません。
そこで、大回り乗車ができる根拠をここで学んで、正しく楽しめるようになりましょう。
先程も述べたように大回り乗車ができる根拠は「大都市近郊区間の特例」があるからです。大都市近郊区間とはJRが東京・仙台・新潟・大阪・福岡に設定している区間のことで、この制度の細かい話は「JRの運賃・料金 ~乗車券・特例編~」に譲りますが、以下の3点を理解して頂ければ結構だと思います。
1.実際の乗車経路に関わらず運賃は最短経路で計算する
大都市近郊区間の範囲内であれば、どんなに遠回りをしても、実際に支払う運賃は最短経路の分のみで大丈夫です。
東京から神田まで山手線外回りに乗っても、東海道線・南武線・中央線と回ってきても、運賃は山手線内回りに乗った場合の140円で大丈夫です。
2.有効期間は1日のみ
大都市近郊区間の範囲内のみを利用する場合、何キロ乗っても有効期間は1日のみなので必ず終電までに帰らなければなりません。
3.途中下車はできない
JRの場合、通常は101km以上の乗車券であれば途中下車が可能ですが、大都市近郊区間内のみの利用の場合、何キロ乗っても途中下車はできません。
ポイント!
・大回り乗車ができるのは大都市近郊区間の特例があるから
・大都市近郊区間で完結する乗車券は最短経路の運賃で遠回りできる
・大都市近郊区間では乗車券の有効期間は1日だけ
・乗車キロ数に関係なく途中下車は出来ない

注意点も・・・

このような制度があるお陰で大回り乗車が合法的にできるわけです。
ただし、JRの制度が複雑ということもありますが、正しく理解されていないことも多いので、注意点を見て行きたいと思います。
1.経路が重複してはいけない
大回り乗車は、あえて遠回りをすることだと言いましたが、どんな遠回りでも無制限に許されているわけではありません。
よく大回り乗車は一筆書きと表現されますが、これは微妙に間違いで、正確には「同じ駅を2度通らない」ということになります。
例え、同じ路線に2度以上乗っていなくても、同じ駅を2度以上通っていると大回り乗車は成立しません。ただし、唯一の例外としていわゆる「6の字経路」というものがありますが、これについては後述します。
また、他のJRの運賃計算の特例を適用することで、大回り中に経路の重複が認められるケースもありますが、こちらも別の項で説明したいと思います。
2.あくまで大都市近郊区間の範囲内のみ
たまにこの制度を拡大解釈して、大都市近郊区間から外れる地方で大回り乗車のようなことをしたり、大都市近郊区間からはみ出す大回りコースを作ってしまう方がおられるようですが、この制度はあくまで大都市近郊区間の範囲内のみを利用する場合に限って遠回りな経路での乗車を最短経路の運賃で認めているのであって、1区間でも大都市近郊区間からはみ出したり、そもそも大都市近郊区間ではないところでやってはいけません。
もし大都市近郊区間外で大回り乗車のようなことをするのであれば、実際の経路に基づいた運賃を支払う必要があります。
3.途中下車はできない
先ほどの制度の説明でも出ましたが、途中下車はできません。
JRでいう途中下車とは改札を出ることなので、改札から出ずにホームに降り立つだけならば大回り中にも可能ですから、トイレや食事のために改札から出ずに途中の駅で降りるのは問題ありませんが、改札から出るならば、その駅までの運賃をその場で精算しなければなりません。
逆に言えば、改札から出なければ降り放題ということでもありますから、遠方の駅のエキナカを見たいとか、駅で写真を撮りたいなんて方にも、大回り乗車は有効と言えるでしょう。
ただし、無人駅については列車から降りた瞬間に「下車した」とみなされますので、例え駅から出ずに次の列車でまた大回りを再開するつもりだったとしても、その駅までの運賃を精算しなければなりません。
4.乗車券の種類に注意
大都市近郊区間内で完結する乗車券は大都市近郊区間を利用する場合の特例が適用され、大回り乗車ができるきっぷということになりますが、乗車券ならなんでもいいわけではありません。
乗車券の中でも、大都市近郊区間の特例が適用されるのは「片道乗車券」「回数乗車券」のみで、「定期乗車券」は適用外です。
従って、定期券があるからタダで大回りし放題というのは間違いで、定期券経路からはずれて利用する場合は、実際に乗車したルート通りの運賃を精算しなければなりません。
それから、ICカード乗車券については扱いが複雑なので別の項で説明したいと思います。
ポイント!
・大回り乗車中は同じ駅を2度通ってはいけない
・大都市近郊区間から出てはいけない
・乗車キロ数に関係なく途中下車は出来ない
・大回り乗車できるのは「普通乗車券」と「回数乗車券」のみ

区間外乗車について

大回り乗車でも基本的にはJRの他の特例が適用できます。
従って、「分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例」なども大回り乗車中にも適用できます。
この制度の詳細は「JRの運賃・料金 ~乗車券・特例編~」に譲るとして、例えば京浜東北線の快速で大宮から上野に出てから常磐線に乗り換えるような場合、上野~日暮里間が重複するものの日暮里駅を通過する列車に乗るため特例が適用され、上野乗り換えもOKとなります。
JRの運賃制度に明るくない方はこの特例を利用した大回り乗車の行程を考えるのはうっかり特例で認められない経路を作成してしまう可能性もありますからおすすめしませんが、これを活用すれば行程の幅が広がります。
注意点としては、区間外乗車の区間が大都市近郊区間から出てしまう場合には適用されないということです。
例えば、近江塩津駅を通過する列車に乗って北陸本線・湖西線を相互に乗り継ぐ場合は、分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例で敦賀まで区間外乗車が可能ですが、近江塩津~敦賀間は大都市近郊区間外となるため大回り乗車の場合は、この区間の特例は利用できないようです。
ポイント!
・大回り乗車中でも区間外乗車の特例が認められる
・ただし、区間外乗車区間が大都市近郊区間から出てしまう場合は不可

特急列車やグリーン車等の扱い

大回り乗車で乗れる範囲には特急列車や、指定席・グリーン車を連結した列車も運行されています。これらについても、該当する料金券を買い足せば大回り中に乗車することが出来ます。なお、料金券の詳細は「JRの運賃・料金~料金編~」をご覧下さい。
注意が必要なのは、大回り中、乗車券は最短経路分だけでいいのですが、料金券(特急券・グリーン券など)は、実際に乗車する区間分必要になります。
例えば、東京→八王子→東神奈川→有楽町といった経路で大回りをし、そのうち新宿~八王子間で特急を使う場合、新宿~八王子間の特急券が必要になります。
極論を言えば、東京~横浜間のみ「サンライズ瀬戸・出雲」に乗車するなんてことも可能ではありますが、普通はしませんよねw
ポイント!
・大回り乗車中でも特急列車や指定席・グリーン車などを利用できる
・ただし、実際に乗車する区間の料金券が必要

特殊な大回り乗車

大回り乗車自体が特殊な乗り方と言えますが、その中でも特殊な例を2つほど挙げてみたいと思います。
1.終夜運転を利用した大回り
東京近郊区間では、あまりに範囲が広大なため始発から乗っても終電までに終わらない大回り経路というのが成立します。これは、制度上は認められるが実際にはできない経路ということになります。
しかし、1年で1日だけこれができる日があるんです。それが「大晦日」
なぜ、大晦日かというと、大晦日の深夜から元旦にかけては、初詣客向けに終夜運転が実施されるため、「終電までに帰る」というルールが事実上緩和されることになります。
こう書くと、「さっき、大都市近郊区間のみの乗車券は1日限り有効って書いたじゃないか」と突っ込みの声が聞こえそうですが、JRには継続乗車という制度があります。これは乗車中にきっぷの有効期限が過ぎてしまっても、最終目的地の駅まではそのまま乗り続けることができるというものです。つまり、12月31日に買った当日限りの乗車券も、途中で改札を出ない限り1月1日の終電まではそのまま乗っていてよいということになります。
これを利用すれば、事実上2日間かけて大回り乗車することができ、普段は終電という時間制限に阻まれて出来ないような超ロングコースも実現してしまうわけです。
注意点として、12月31日に購入したきっぷを1月1日に自動改札機に通してもエラーとなり改札を通過できない可能性が高いので、きっぷを駅員さんのいる窓口に持って行き、大回り乗車した旨を申告して通してもらいましょう。
ところで、継続乗車があるならば、普段から終電を過ぎても駅で始発を待っていれば2日間かけて大回りできるのではないかと思った方もいるかもしれませんが、終電が出た後は強制的に改札外に出されてしまいますから、そこでその駅までの運賃を精算することになり、結論としては不可能です。
また、大晦日であっても終夜運転を行わない区間で終電を過ぎてしまうとやはり駅から追い出されてしまいその駅で精算することになりますから、終夜運転の区間で終電から始発までの時間を過ごすようにスケジュールを調整しなければいけません。
2.6の字経路
大回りの注意点として「同じ駅を2度通らない」ということを書きました。
しかし、「1度通過した駅に再び戻ってきてそこをゴールとする」場合、これは片道乗車券の経路として成立しますから、大回りでも可能です。(詳しくは「JRの運賃・料金~運賃・原則編~」をご覧下さい)
具体的には、上野からスタートして南浦和→新松戸→日暮里という経路は日暮里駅を2度通ることになりますので、6の字経路に該当します。
ただ、一度目的地の駅を通り過ぎた時点で、運送契約が終了する(=その時点できっぷは無効)とする解釈も存在し、合法かどうかは賛否両論あるのが現状です。
なので、大回り乗車初心者の方やJRのルールに明るくない方が試すのはリスクが高く、万一駅員さんや車掌さんとルールの解釈を巡ってトラブルになっても自ら根拠を示して説得できるくらいの自信がある方以外はお勧めしません
ポイント!
・終夜運転を利用すると2日連続で大回り乗車ができる
・6の字ルートは賛否両論あり初心者には向かない

ICカード乗車券と大回り乗車

大都市近郊区間はほぼICカード乗車券の利用エリアと重なっており、ICカード乗車券を利用した大回りも可能です。
ただし、注意が必要なのが、定期券を搭載したICカード乗車券の場合です。特に定期券区間内の駅から定期券区間内の駅へ大回りする場合に注意が必要です。
例えば、大宮駅から東京駅までの定期券を搭載したSuicaで大宮→小山→友部→日暮里→さいたま新都心という経路で大回りをした場合、さいたま新都心駅で自動改札機にタッチすると自動改札機は定期券を利用したと判断して、1円も残高を差し引かずに改札を通過できてしまいます。
これが合法かどうかはやはり賛否両論ありグレーゾーンというのが現状で、このようなケースでは自動改札機を通らず、大回りをした旨を駅員のいる改札口で申告して、この場合ならば大宮→さいたま新都心の普通運賃を差し引いてもらうという対応をすべきだという意見もあります。
それが面倒だということであれば、定期券を搭載していないICカード乗車券を用意するか、紙の乗車券を買って行うほうが手っ取り早く安全といえるでしょう。
ポイント!
・ICカード乗車券でも大回り乗車ができる
・定期券付きICカード乗車券は取り扱いが面倒になる

改札口にご注意

大回り乗車は合法な乗車方法ですが、改札機の中にはきっぷを入れても通してくれないものがあります。
それは、短区間の乗車券の場合、入場から一定時間過ぎた乗車券は有人改札に行くように案内する仕様になっている場合です。
これはあくまでも機械の仕様として時間制限を設けているだけで、JRの制度上はその日の終電まで有効であることに変わりはありませんが、このような場合は有人改札に行って、大回り乗車した旨を申告した上で通してもらいましょう。
最近は駅員さんも大回り乗車への理解があるようになってきたのか、根掘り葉掘り質問されるケースはまれのようですが、乗ってきた経路や場合によっては大回り乗車のできる根拠を聞かれる場合もありますので、答えられるように準備しておきましょう。
大回り乗車の出来る根拠は、向こうもプロですし自社の規則ぐらいは把握しているはずですから特別なものを用意しておく必要性は薄いですが、極稀に大都市近郊区間の特例を正しく理解していなかったり、制度は知っていても大回り乗車を快く思わない駅員さんなどもおりますので、心配な方は時刻表を持っておくとピンクページを見せて説明がしやすいです。
一方、経路の方は大回りをする人それぞれで経路が違っていて、経路次第で合法だったり精算が必要だったりするのが大回りですから、正確に答えられるようにしておかなければなりません。
路線図が頭のなかに入っていて、路線名や接続駅をすらすらと暗唱できるような方は別として、そこまで自信がないという方は行程表を作っておくか、路線図のコピーをとって大回りのルートをペンで塗りつぶしておくといった形で、経路が分かるものを持ち歩くのも手です。
また、最近は普通列車で行われることはまれですが、車内改札があった場合も事情を聞かれる可能性がありますから、大回り中であることを申告し、経路を正確に説明できるようにしておきましょう。
ポイント!
・改札機によっては一定時間経つとゲートが閉じてしまうことがある
・そういう場合は駅員さんのいる有人改札へ行く

中間改札口

JRの駅の中には乗り換えるだけでも改札を通過しなければならないものがあります。大回り乗車に関係するものとしては、浜川崎駅、折尾駅などが有名です。浜川崎駅については鶴見線と南武支線の乗換駅となりますが、もともと別々の会社の路線だったという歴史的経緯により現在でも改札が別になっているため、大回り中でも改札を出て乗り換えなければなりません。ただし、現在は無人駅となっており、ICカード用簡易改札機があるのみとなっており、ここでタッチせずに通過すれば問題ありません。
折尾駅の方は鹿児島本線と筑豊本線を直通運転する列車が発着する「鷹見口」がその他の乗り場とは別改札となっているもので、該当する列車以外の乗り継ぎは改札内でできます。もし該当する列車との乗り継ぎを行う必要がある場合は、有人改札に行き乗り継ぎであることを申告すればそのまま改札を通ることが出来ます。
これら以外には「特急専用改札口」というものもあります。大回りに関連するところで有名なのは上野駅の常磐線特急用の改札口です。
ここでも当然切符を見せなければなりませんが、上野とは全く無関係の駅からの初乗り切符を見せても通してもらえない可能性がありますから、大回りであることを説明する必要があります。ここで時間がかかる可能性もありますから、特急列車で上野駅を発着するような大回り行程を立てるときは乗り換え時間に余裕を持つようにしましょう。
ポイント!
・同じ駅の乗り換えでも中間改札機が設置されている場合がある
・中間改札の通過には大回り乗車中である旨の説明が必要な場合も・・・

大回り中のトイレ・食事事情

大回り初心者の方が心配することとして、トイレと食事があるでしょう。
まずは、トイレについてですが、車内トイレは列車によってついていたりついていなかったりします。同じ路線でも使用される車両によって違ったり、同じ車両でも路線によって違ったりするため、トイレがある列車の一覧を示すことは出来ませんが、いわゆる「近郊列車」はトイレが付いている可能性が高く、都市内を走る通勤電車のような路線ではついていない可能性が高いです。
大回り乗車にかぎらず鉄道旅行全般に言えますが、トイレはなるべく車内トイレを当てにするのではなく、乗り換えの駅で済ませられるように余裕を持った行程を組むことをおすすめします。
特に長時間乗車することになる列車の直前の乗換駅は、例え催していなくてもとりあえずトイレに寄っておくくらいの心構えのほうがいいでしょう。
また、食事についてですが、普通列車では車内販売はまず行われていないため、乗り換えの駅で調達するしかありません。
都市部の大きな駅ならば改札を出ずに利用できる飲食店もたくさんありますし、売店で駅弁を買うといったこともできますから、それほど困らないのですが、郊外まで出るルートですと、改札外にしか店がないというケースも珍しくありません。
ですから、なるべく都心部の大きな駅で食事を摂る行程にするか、どうしてもお昼時に郊外の駅にしか立ち寄れないならば予め大きな駅で駅弁やパン・おにぎりといった食料を調達しておくのがベストです。
もしも、どうしてもお腹が空いたが改札外にしか店がないという場合ですが、駅員さんに大回り中で改札外の店を利用したい旨を申告すると改札の外へ出してもらえることがあります。
これは制度にはないいわば超法規的措置ということになりますから、端からこれを当てにして改札外の店を利用する前提で行動するのは間違いですが、予期せず食料調達に失敗して、改札外にしか店がないという状況に遭遇したらお願いするだけしてみるのは緊急時の対処としてはアリではないでしょうか。
ポイント!
・トイレは行ける時に行く
・食事の確保も大きな駅で事前調達するなど余裕を持って行動する
・どうしても改札外のトイレや店を利用したい場合は駅員さんとの交渉で出してもらえることも

大回り中の運行支障

いくら世界一正確と言われる日本の鉄道でも、事故や災害などで遅れたり運転を見合わせたりすることがあります。
大回り中にそういう状況に遭遇することもないとは言い切れません。そういった場合の対処法について解説したいと思います。
大回り乗車といえども乗車券を買って乗っている以上、そのようなケースでも振替輸送や代替輸送を利用することができるわけですが、例えば東京駅から140円区間の切符を使って水戸線の代替輸送を利用するとなると、ただ切符だけ見せても駅員さんは事情を理解できない可能性がありますから、大回り乗車中であることを説明する必要が出てきます。もちろん、経路についても説明が必要です。
それから、場合によってはその駅までの運賃を精算しないと振替輸送や代替輸送が利用できないというケースもありますが、大回り乗車中の振替輸送や代替輸送を認めるかは現場での判断となりますから、大回り乗車にはそういうリスクもつきものだということを理解しておきましょう。
特に注意が必要なのがICカード乗車券で、ICカード乗車券の場合、大回り乗車かどうかに関わらずそもそも振替輸送や代替輸送を利用できません。ここでは詳しい理由などは省略しますが、規則でそのようになっていますので、もしICカード乗車券で大回り乗車をしていて途中で運行支障に遭遇した場合は、すぐに運転が再開されそうならばしばらく駅構内で待つか、その駅までの運賃を精算してから、引き返すなり改めて紙の乗車券を買って振替輸送・代替輸送を利用するとった対応が必要になります。ICカード乗車券は便利ですがこういうリスクもありますのでご注意下さい。
ポイント!
・大回り乗車中の運行支障でも振替輸送・代替輸送が利用できる
・ただし、現場の判断で利用できない可能性も・・・
・大回りにリスクはつきもの

大回り中にギブアップ・・・

大回り乗車をしている最中に急に体調が悪くなったとか、急用ができてすぐにでも帰らなければならなくなったような場合の対処法についてです。
一番手っ取り早いのは、経路を変更して最短経路で帰ることです。これなら追加の支出もありません。しかし、最短経路だと今までたどってきた経路とぶつかってしまうという場合は、残念ながら大回りを中止する駅までの運賃を精算することになります。
紙の乗車券だった場合は、乗車券の区間から乗越精算をする形となります。ICカード乗車券であれば何も考えずに自動改札機にタッチすれば勝手にその駅までの運賃が差し引かれます。
このようなケースもありますから、大回りをする際は余分にお金を持っておくことをおすすめします。(大規模な大回りをする場合、精算額が数千円単位になることもあります)
ポイント!
・途中でギブアップする場合は基本的にはその駅までの運賃を精算することになる
・戻りたい駅までの最短経路が今まで通った経路とぶつからなければそのまま帰ることもできる

最後に・・・

長々と大回り乗車について解説してきたわけですが、最後に大回り乗車をする上で気をつけること、心がけることなどを書いてシメとしたいと思います。
大回り乗車を利用するとわずかな出費でたくさんの列車に乗ったり、色んな駅のエキナカを楽しめたり、ミニ旅行を楽しんだり、遠くの駅まで撮影に行ったりできて、大変便利なわけですが、大都市近郊区間の特例とは本来このようなことをするために設けられた制度ではなく、結果的に大回り乗車ができるようになってしまったに過ぎません。
実行する際は、安い運賃でお得に利用させて頂いているという謙虚な気持ちを忘れず、JRに感謝して楽しみましょう。
そして何より、大回り乗車は紙一重で不正乗車になってしまうものであり、正しい理解が不可欠です。本ページで興味を持って頂けたなら幸いですが、実行する前に制度を正しく理解しているか確認するとよいでしょう。
それから、忘れてはいけないのが、大回り乗車中のトラブルは基本的に自己責任だということです。振替輸送も必ず受けられる保証があるわけではありませんし、その場合その駅までの運賃を精算することになる可能性などのリスクも考慮の上で大回り乗車をしましょう。
最後に、このページが大回り乗車の正しい理解と、楽しさを伝えることに貢献出来ましたら幸いです。