「IKEBUS」に乗ってみた!

今回は池袋地区で運行されている新たな交通機関「IKEBUS」に乗車しましたのでそのレポートです。
なお、例によって執筆が遅れておりまして、この活動は2020年1月に実施したものであり、2020年5月現在は新型コロナウイルスの影響で「IKEBUS」は運休しており、運転再開の時期は未定となっていますのでご注意下さい。

「IKEBUS」の概要


今回は内容が「IKEBUS」だけなので先に概要を説明してから本編に入っていきましょう。
「IKEBUS」は池袋駅を起点に周辺の諸施設を結ぶ交通機関であり、時刻表に沿って運行され、誰でも利用可能である点から路線バスとしての運行になっています。しかし、通常の路線バスとは違う点があり、それは使用する車両です。小型な電気バスを使用しており、最大定員21名、最高時速19kmというゆったりした運行が特徴で、シンクトゥギャザー社という会社が製造する”eCOM-10″という車両なんだそうです。
全長4995mm×車幅2000mmと大きめの商用バン程度の大きさであることを活かし、大型バスが入れない狭路や住宅地まで入り込んでの運行が可能であり、都市部での回遊性を高める目的や地方の新たな住民の足として近年広まりつつあるようです。
また、国土交通省では「グリーンスローモビリティ」というものを推進しており、「IKEBUS」もこれの1つと言うことが出来ます。

続いて運行概要ですが、池袋駅東口からHareza池袋、南池袋公園、東池袋駅、サンシャインシティを経由して池袋駅東口へ戻るAルートと、池袋駅西口から、Hareza池袋を経てサンシャインシティ西へと至って再び池袋駅西口に戻るBルートがあり、いずれも循環ルートになっているので、池袋駅を跨ぐ利用も可能ですし、1周乗り通しても大丈夫みたいです。
ダイヤは始発が10時頃、最終が20時頃と、早朝や夜間は利用できないのですが、運行時間中は20分ヘッドで運行されるので気軽に利用できるダイヤになっていると言えるでしょう。
運賃は均一で大人200円、小児100円となっており、1日乗車券が500円で発売されているので、池袋地区で色んな場所をめぐるなら1日券が便利でしょう。

あと、運行しているのは都市間高速バスで有名な「WILLER」であり、事業主体は豊島区なので制度的な位置づけとしてはコミュニティバスに近いと言えるでしょう。

それから、通常の運行とは別に貸切運行も可能であり、団体での移動や観光ツアー、園庭を持たない幼稚園・保育園の園児を大きな公園まで移動させる手段など様々な活用が見込まれているようで、基本的には豊島区内の移動に限られるようですが、興味のある方は貸切も検討してみてはいかがでしょうか?

といったところでそろそろ本題の乗車レポートへと進みましょう。

まずはAルートから乗車

それでは本編に入ります。まずは池袋駅東口へ向かってAルートに乗車です。


池袋駅東口のバス停にやってきました。
池袋駅東口には都営バスや国際興業バスなどの路線バスが集まりますが、統一されたバスターミナルが存在せず、路線ごとにバラバラにバス停が存在して慣れないと利用しにくいという難点があるのですが、IKEBUSについては駅を出てすぐのところにバス停があって分かりやすいです。


バス停のポールにも”IKEBUS”と案内されていました。


時刻表です。
始発は10時10分、最終は19時50分と通勤・通学で使うには不便なダイヤかもしれませんが、Hareza池袋もサンシャインシティも歩こうと思えば歩ける距離ですし、東池袋駅へも他の路線バスが利用可能なので、通勤・通学需要は端から考慮していないということでしょうか。
なお、19時30分発と50分発は豊島区役所で終わってしまう便であり、Hareza池袋、サンシャインシティ、東池袋駅への移動では使えますが、池袋駅に戻ってくることは出来ないので1週乗り通そうと思うなら19時10分発が実質的な最終となります。


運賃などの説明ですね。
冒頭にも書いたとおり、大人200円、小児100円ですが、シルバーパスなど65歳以上であると証明できるものや障害者手帳を提示すると100円になるようです。

あと、フリーパスについてですが、冒頭に書いた500円の1日券の他、3時間券(300円)、2日券(800円)も用意される予定らしいですが、現時点では発売されておらず、公式サイトにも記述はありません。

それから、これが1番大事なことかもしれませんが、現状は支払い方法は現金のみです。
今や地方のバスでもICカードが普及しつつある中で、池袋という大都会を走るバスで使えないのはどうなんだと思いますが、恐らくWILLERは都市間バスでは実績があるものの、東京都内での高速バスではない普通の路線バスでの営業実績がないことから、SuicaやPASMOの導入が認められないのではないかと思います。

類似の事例として品川駅・田町駅からお台場地区を結ぶ「お台場レインボーバス」を運行する「ケイエム観光バス」も貸切バスでの実績はあれど、路線バスでの実績が皆無だったためかSuica・PASMOは導入されず、代わりに”iD”が導入されたというケースがあります。

その代わり、スマホを使ったQRコード決済に対応する予定らしく、いつになるのかは発表されていませんが、そうなれば路線バスにおけるQRコード決済の先行事例になるものと思われます。
QRコード決済はICカードよりも事業者側の導入コストが安いと言われていますし、IKEBUSでの導入が成功裏に実現すれば地方でも爆発的に広まるかもしれませんね。


バス停のてっぺんにはこんなキャラクターがいます。
「イケちゃん」という若干安直な気もするネーミングですが、フクロウがモチーフのようです。

池袋の待ち合わせ場所の定番「いけふくろう像」からの連想でフクロウなんでしょうけど、池袋にはフクロウカフェが集まっていたりして、すっかり街の象徴のようになっていますからね。


それではあとはバスを待つのみです。


IKEBUSを待つ間に撮りバスです。西武の高速バスですね。


都営バス


こちらも都営バスですが、東京五輪のラッピング車でした。

といったところでそろそろ発車時間ですが未だやって来ず・・・
案外定時性は低いのかな?w


結局、路線バスとしては定刻の範疇に入れていいであろう3分程度の遅れでバスはやってきました。


こちらが”IKEBUS”です。
サイズ的にはポンチョより更に一回り小さい程度であり、地方の過疎地域で使われるようなハイエースコミューターとかと変わらない程度の大きさでしょうが、外観としての最大の特徴は5軸も備えた車輪ですね。
5軸全てが駆動輪となっているらしく、小型のモーターを多数配置する構造のようです。


それにしても、少なくとも日本では珍しいタイプの自動車ということもあって現実感の湧かない見た目をしていますね。


とはいえ路線バスは路線バスなので行先表示はちゃんとあります。


こちらが料金機です。IKEBUSは運賃先払い方式であり、この機械に運賃を入れてから乗り込みます。
普通は運転席の脇にあるものですが、この配置は珍しいですよね。


運用はAルート、Bルートとも共通なのか、どちらの路線図も並んでいました。


IKEBUSも路線バスの1つですから、降りるときは降車ボタンを押します。

それでは出発です。乗り込んでまず最初に思ったこと・・・寒い!w
冒頭にある通り、この活動は1月というまだまだ冬と言っていい時期だったのですが、IKEBUSには冷暖房がないため風が遮られるだけマシとはいえ外気と変わらない温度の車内になりますw
冬は防寒着を着込めば問題ないですが、夏場の暑さはどうするんだと思ったら、暑さの厳しくなる真夏は運行を休止する予定なんだとか・・・
バッテリー駆動という都合上、大電力を消費する冷暖房の設置は避けざるを得なかったのでしょうが、暑いという理由で運休になる交通機関って一体w


池袋駅東口を後にします。
「東が西武で西東武」と歌われたように西武百貨店がランドマークの1つになっていますね。
ずっと気になっていたのは走行音ですが、電気自動車ということで電車に近いモーター音をはっきり聞くことが出来ました。
ハイブリッドならまだしも、完全に電気だけで走るバスというのはまだまだ少ないですし、モーター音をBGMにしたバス旅というのは新鮮でした。
まあ、スピードをさっぱり出さないのでそんなに大きなモーター音は聞こえませんけどね。
もう1つ特徴としては、通常のバスはドアの開閉は圧縮空気で行うので開閉時には「プシュー」という音がするものですが、IKEBUSはドアの開閉も電気モーターを使っているのか「ウィーン」という音がします。

あと、アナウンスの音源は以前に乗車した「成田シャトル」と同じでしたので、WILLERの都市間バスで使っているものをそのまま流用しているようです。

それから、車内の様子ですが、座席の半分程度は埋まっているかなという程度の乗車率で、元々の定員が少ないことを考えればそれほど利用者が多いという感じではありません。
まだ運行が始まって2ヶ月程度(乗車時点)ということで、利用者の定着はこれからなのかもしれません。


しばらく走るとこんな狭い路地に入っていきました。
コンパクトな車体を活かしたルート設定といえますね。
そういえば、「バスが通ります。ご注意下さい」という車外向けのアナウンスが流れていたんですが、歩行者の多い路地を通る場面が多い上、走行音の静かな電気自動車ゆえに接近に気づいてもらえないということで設置しているんでしょうね。
乗用車でもハイブリッドカーで、疑似走行音を流す装置が搭載されていますがそれと似た機能と言えるでしょう。

あと、最高時速が19km/hと下手をすれば自転車にすら追い抜かれるような低速なので、交通量の多い幹線道路を延々と走れば一般車に迷惑になってしまうために交通量の少ない路地を選んだルート設定にしているのもありそうです。


バスが通るとはとても思えない道路風景ですw
なお、IKEBUSは最後尾部分は幌になっていて開けられている場合はこのようにガラスを通さずに景色を楽しめるので、トロッコっぽい雰囲気もあります。


気がつけば後ろにもIKEBUSがいました。
あれは西口からのBルートのバスであり、Hareza池袋ではAルートとBルートの乗り換えが可能です。


それにしても、こんな狭いところを走っているなんてそれだけでネタだなぁw


AルートはHareza池袋からまた来た道を引き返すように進みますが、途中で国際興業バスの乗り場の脇を通っていきます。
しかし、ここにはIKEBUSのバス停はないので乗り換えはできないというw
どうせならバス停を設置すれば・・・と思いますが、適当な設置場所がなかったとかでしょうか。


池袋の繁華街を進みます。
ここはそんなに飛ばせる場所ではないとは言え、後続の一般車にとっては邪魔そうですねw


ふと目に入ってきたのは黄色いIKEBUS!
実は10台あるIKEBUSのうち、7号車の1台だけがラッキーセブンにちなみ黄色い塗装になっており、「幸運のバス」と呼ばれているんだとか。
このようにすれ違うだけなら割と普通に見られそうですが、たまたま乗ったのが黄色だったという人はその日はいいことがあるかも?


首都高下の大通りへ出ました。
普通の路線バスだったら何の違和感もない光景ですが、IKEBUSがここを走っていると思うとなかなかカオスw


首都高速の東池袋入口に差し掛かりました。もちろんIKEBUSは首都高なんて走りませんが、首都高は通常の高速道路(法律用語で言う「高速自動車国道」)には当てはまらないので、法律上はIKEBUSも首都高を走れるということになるんでしょうか?
まあ、最高速度19km/hで首都高を走ったら大迷惑ですし、追突されかねずかえって危険なので絶対にやらないと思いますけどw


ここらで車内も空いてきたので車内のご紹介です。


床は寄木細工風のデザインです。


座席です。うん、もしかしなくてもどこかで見たデザインですよね。
だいたいお察しだと思いますが、JR九州を始め多くの観光列車のデザインを手掛けているあの水戸岡鋭治氏がデザインを担当しています。

WILLER系列のWILLER TRAINSが北近畿タンゴ鉄道の運営をしていますが、そこを走る観光列車も水戸岡鋭治氏がデザインを手掛けたということで、WILLERと水戸岡鋭治氏の接点もIKEBUS以前からあったと言えますね。


手すりがかぶってしまいましたが、通常の路線バス同様に次のバス停を案内するモニターもあります。
運賃は均一の先払いなので運賃表示器はありませんけどね。


東池袋駅を出ると大通りを外れてサンシャインシティへ向かいます。
サンシャインシティでもBルートと一部重複しますが、サンシャインシティではAルートは「サンシャインシティ北」と「サンシャインシティ西」という2箇所のバス停を設けていますが、Bルートはそのうち「サンシャインシティ西」にのみ停車するので注意が必要です。

やはりサンシャインが目当ての利用者が多いのかここで降りる人が多いですね。
サンシャインをすぎればまた来た道を引き返しますが、東池袋駅を出ると往路とは違うルートに入ります。


首都高下を逸れて向かうのは・・・


豊島区役所です。2015年に現在地に移転したそうで、高層マンションと一体化した庁舎は、東京23区の区役所が入る建物としては最も高いんだそうです。
ただし、大きすぎて車窓からは全貌は見渡せませんけどねw
ちなみに、旧庁舎があった場所は再開発されてIKEBUSのルートにも組み込まれている「Hareza池袋」となっています。

あと、最終とその1本前のIKEBUSのAルートは豊島区役所が終点になることは既に書いていますが、実は豊島区役所内にIKEBUSの車庫があるらしく、その関係だと思います。
ついでなので書きますが、車庫は豊島区役所内ですが、WILLERの池袋営業所はまた別の場所にあり、ビルの一角にあるという珍しい立地の営業所になっているようです。


また、幸運の7号車とすれ違って池袋駅に戻ります。

とここで運転士さんから池袋駅で車両交換をするので、引き続き乗車を希望する人は申し出るようにとの案内がありました。
基本は連続して循環運行されますが、IKEBUSは満充電でも60km程度しか走れないようなので、ちょくちょく車両交換しているんでしょうね。


池袋駅東口に戻ってきました。
幕は回送に変わっていました。


ところで、ステアリングはこうなっているんですね。


↑最後に出発シーンを動画で撮ったら続いて西口へ移動して今度はBルートです。

続いて西口よりBルート

池袋駅の構内自由通路を通り抜けて西口へやってきました。


いました!
こちらも駅を出てすぐの場所で分かりやすいですが、西口にはバスターミナルがあるのにそっちを使わないのはもったいない気も・・・


ちょうど地下街からの出口がバス停の脇にあるので撮影向きじゃないですw


バス停のポールと車体の「イケちゃん」が並びました。
ちなみに、車体の上にいる「イケちゃん」はヘッドライトと連動して目が光るそうですよ。


この部分はなんだか顔に見えますね。


側面にもIKEBUSのマークがありました。


「ハレザ・サンシャイン」というアバウトな行き先を撮ったら乗り込みます。

今度はAルート以上に空いていますが、BルートはAルートより需要がないんでしょうかね。
それでは発車です。池袋の飲み屋街に入りそうで入らない微妙なルート取りで池袋駅北口の脇をかすめて進みます。


東武鉄道の広告を見つつ池袋駅北口を進みます。
ちなみに、Hareza池袋から池袋駅へ来るときは北口にもバス停がありますが、逆に池袋駅からHareza池袋へ向かうときは北口には停車しないので要注意です。


次第に高度が上がってきたと思ったら池袋大橋を渡ります。
池袋駅周辺で西口と東口を行き来できる数少ない車道の1つですから、Bルートは必然的にこの橋を渡るわけですが、一般車にとっても重要なルートであり、あっという間に後ろには車列が出来上がりました。
そりゃあ最高速度19km/hですからねw
流石にここは端に寄せて後続に道を譲っていました。


橋の途中でこの直角カーブはなかなかない線形ですよね。


この橋からはJRと東武東上線の線路が見下ろせるのでIKEBUS乗車中の鉄分補給ポイントの1つですw


Hareza池袋を経てサンシャインシティへ向かいますが、Aルートと重複する区間もあるので車窓は似たりよったりですね。


Bルートの折り返し地点となるサンシャインシティで折り返して池袋駅へ戻ります。


池袋駅北口まで来ました。前述の通り池袋駅へ向かうときだけは北口にもバス停がありますがこの理由がこの後わかりました。


マルイも見えて池袋駅西口お馴染みの光景ですが・・・


IKEBUSは更に東京芸術劇場もある西口バスターミナルへと入っていきました。
しかし、ここにバス停はないので通るのみw

ぐるりと西口周辺を迂回するようにしてようやく西口のバス停にたどり着きました。
北口バス停のある場所から西口バス停までは直線距離ではわずかしか離れていないのですが、一方通行の規制があるためにこんな遠回りを強いられるわけですね。
北口のバス停が池袋駅へ向かうときだけなのは、IKEBUSに乗って池袋駅へ向かう人をこの迂回に付き合わせることなく駅へ向かえるようにという配慮なんでしょうね。


1周して西口に戻りました。


↑最後に発車を見送って終了です。

Bルートのレポートはあんまり膨らみませんでしたが、池袋大橋を通行する点がハイライトだったと思います。

あと、これはAルートにも言えることですが、1周乗車する人が何人か見受けられたのは意外でした。
まだまだ走り始めて日が浅く物珍しさもあるんでしょうけど、移動手段としてというよりも観光アトラクションみたいな感じで乗っている人もいそうですね。
正直、最高速度19km/hという低速な上に遠回りなルート設定が多いということもあって実用的な移動手段として考えるとそれほど便利とは言えない気もするのですが、ゆっくり走ることで街並みを眺めつつ”移動を楽しむ”という意味では面白いと思います。
今は新型コロナウイルスのせいで自粛が続いており、IKEBUS自体も運休中ですが、事態が収束を見てまた気軽に出掛けられる時がきて、池袋へ出かける機会のある方は乗ってみてはいかがでしょうか?

といったところでレポートは終了です。流石に1万字は超えませんでしたが思ったよりはボリュームが膨らんで驚いておりますw

次回ですが、3月中に引退を迎えたとある列車に乗りに行っておりそのレポートになると思います。
ただ、皆さんご存知の通り4月に入ってすぐに政府による緊急事態宣言が発布されてからは、私も趣味活動を自粛しており、次のレポートでしばらくネタ切れということになります。
なので、次の記事以降またしばらく更新が途絶えるかもしれませんが、その代わり最近更新が滞りがちなサイトの方の「聞ける車両辞典」や「とれいんアカデミー」などの更新に手を付けられればと思います。
それでは!

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つばめ501号(管理人) について

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