今回はJR九州が運行するD&S列車の「36ぷらす3」に乗車したのでそのレポートです。
これが2022年の新年一発目の活動となり、私の故郷である福岡からスタートしている上、少し前まで帰省していましたが、帰省とは別枠の活動となっています。
36ぷらす3とは
まずは最初にこの記事のメインである「36ぷらす3」について解説してから本題に入っていきます。
今回は「36ぷらす3」への乗車のみが活動内容といえるため、いつもの活動内容の説明は省略します。
それでは「36ぷらす3」についてですが、JR九州が2020年10月から運行しているD&S列車(観光列車)であり、5日間かけて九州7県を巡る形で運行されており、1198kmを走ります。概要としてはクルーズトレインの「ななつ星 in 九州」と似ていますが、「36ぷらす3」は寝台設備を設けず運行は昼間のみとなっている他、旅行商品扱いでしか乗車できない「ななつ星 in 九州」と違って、通常の特急券・グリーン券などでも乗車でき、必ず全行程を続けて乗る必要もなく、一部区間のみという形での乗車も出来るなど、「ななつ星 in 九州」の簡易版、あるいは廉価版とも言える列車というわけです。
運行は日程ごとに「赤の路」「黒の路」「緑の路」「青の路」「金の路」と名前が付けられており、木曜日の「赤の路」は博多から鹿児島中央、金曜日の「黒の路」は鹿児島中央→宮崎、、土曜日の「緑の路」は宮崎空港→別府、日曜日の「青の路」は大分→門司港→博多、月曜日の「金の路」は博多→長崎と長崎→博多となっています。
全ての日程を合わせると1198kmとなり、JR九州によると環状運行する電車としては世界最大であり「目指すは”世界一のわ”」というメッセージも持っているそうです。
車種は787系を改造したもので、JR九州のD&S列車としては唯一電車による運行となっており、デザインはもちろん水戸岡鋭治氏が担当しています。
車両は個室と座席の2種類があり、個室は食事がセットとなった旅行商品扱いとなり、座席は通常の特急券として発売されます。
また、全車両がグリーン車扱いとなっており、一般発売される座席に乗車する場合は乗車区間の乗車券+特急券+グリーン券が必要となります。
運行については各日程の中で「停車駅」と「特別停車駅」があり、「停車駅」となっている駅同士の区間でのみ利用が可能となっています。
「特別停車駅」については一時的に列車を降りて駅を見学するなど出来る駅という意味の停車で、この「特別停車駅」から乗車したり・下車したりすることは出来ません。
今回乗車するのは「赤の路」であり、一般発売される座席に乗車します。
「赤の路」では、博多・熊本・鹿児島中央の3駅が停車駅であり、博多~熊本や熊本~鹿児島中央といった乗車も可能ですが、「赤の路」の全区間にあたる博多→鹿児島中央で乗車します。
この運行では、第三セクターの肥薩おれんじ鉄道に移管された区間も走行し、九州新幹線が開業するまで運行されていた特急「つばめ」のルートであり、しかも車両も「つばめ」と同じ787系ですから、鉄道ファンにとっては「リバイバルつばめ」とも言える列車ですね。
といったところでそろそろ本題に入ってきましょう。
乗車レポート
まずは博多駅にやってきてそこで「36ぷらす3」を待ちます。
まずは発車標ですね。
ちゃんと「36ぷらす3」と表示されています。
あと、博多駅の在来線ホームで「鹿児島中央」の行先が見られるのは2011年の九州新幹線の全通の直前まで走っていた特急「リレーつばめ」以来なので10年ぶりくらいの光景ですね。
まあ、「リレーつばめ」はあくまで新八代駅までの運行であり、案内上だけの鹿児島中央行きだったんですけどねw
ちなみに、在来線特急時代の「つばめ」が走っていた頃は鹿児島中央駅は西鹿児島駅という駅名だったのでその頃は鹿児島中央の表示はありませんでした。
↑そして、入線です。
とりあえず外観を撮ります。
元の787系よりも暗めの塗装になり、金色の装飾が入って高級感が出ていますね。
それでは乗車です。
実際は乗車したらすぐ発車でしたが、まずは車内を紹介しておきたいと思います。
座席です。
同じ水戸岡鋭治氏のデザインということもあって800系新幹線の座席に似ています。
窓ガラスには障子風のブラインドが付けられているのが特徴的ですね。
ちなみにこれ、最大でも半分しか開けられないので車窓を楽しむにはちょっと不向きですw
テーブルは肘置きに格納するタイプにしては少し大きめになっていました。
車内販売では軽食の販売なんかもあるので食事の利便性を考えて大きめにしたんでしょうね。
キャビンアテンダントさんが案内する際にここにマイクを挿してアナウンスするみたいなんですが、まるで観光バスですねw
スタンプ台を置いたりするためのスペースでしょうか?
閉鎖されているのはコロナ対策?
ちゃんと車内案内表示器もあります。
玉名が「特別停車駅」なので玉名と表示されています。
こちらは3号車の「マルチカー」です。
昔の「ラウンジカー」みたいな車両で、乗客なら誰でも自由に利用できるスペースとなっています。
JR九州のD&S列車にはありがちな沿線の名産品などを展示するスペース
こちらは「36番目のエピソード」というもので、乗客一人ひとりがエピソードを持ち寄ってここに書き込む場所となっています。
なお、書き込んだ内容は車内放送で紹介されますので、その点を了承の上で書き込むようにしましょう。
ビュッフェもあります。
ここで軽食やドリンクなどを買うことが出来ます。
車内の紹介はこれくらいにして、そろそろ乗車レポートに戻るとしましょう。
↑今回も車窓は動画で撮りました。
約6時間の長丁場なのでモバイル回線などでご覧になる場合はデータ量に十分ご注意下さい。
駅員さんなどに手を振って見送られながら博多駅を発車するとアテンダントさんがやってきて案内をしてくれます。
乗務員の挨拶などが済むと時々放送で沿線の紹介があったりして観光列車らしさを感じます。
どんどん駅を通過して往時の特急「つばめ」の走りを再現してくれるかと思ったらなんと列車は停車したのです。
その場所は太宰府信号場という場所で、列車の待避を行うために設けられた信号場です。
普通列車の一部がここで特急を退避したりというのはたまにありましたが、特急がここに停まるのはかなりレアではないでしょうか?
後続の特急を退避したら再び動き出し、再び特急らしい走りに戻ってくれました。
一部の特急が停まる二日市は通過し、一旦佐賀県に入ると鳥栖駅です。
鳥栖駅は全ての特急が停車する駅で、「36ぷらす3」も運転停車という形で停車していました。
再び福岡県に戻って今度は久留米に差し掛かります。久留米駅も全ての特急列車が停車し、九州新幹線の停車駅でもありますが、「36ぷらす3」は容赦なく通過していきましたw
久留米を通過するというのは新幹線を除けば貴重な体験ですよね。
そして、その久留米から先の区間が「36ぷらす3」でしか体験できない貴重な区間となります。
というのは、博多~鳥栖間は「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」が、博多~久留米間は「ゆふいんの森」「ゆふ」がありますが、この区間は九州新幹線と並行していることもあって特急列車の定期運行は既に行われておらず、2022年現在、久留米から先の区間で特急列車に乗れるのはこの「36ぷらす3」だけとなるのです。
この間では「リレーつばめ」の一部と「有明」が羽犬塚・瀬高と停車してから大牟田に停まっていましたが、速達型の「リレーつばめ」は大牟田まで無停車でした。
それにならったのか「36ぷらす3」も大牟田には運転停車していました。車窓からは西鉄電車が見えましたが、西鉄電車で大牟田に行くということを随分していないなと思いました。
その大牟田を過ぎるといよいよ熊本県に入り荒尾市に差し掛かります。
アナウンスでも熊本県に入る旨の案内がされます。
速達型の「リレーつばめ」が大牟田の次は熊本まで無停車でしたが停車型だと玉名に停車していました。
そして、「36ぷらす3」では玉名は特別停車駅になっているので当然停車します。
せっかくなら何か飲もうとビュッフェで買ってきたこちらは「日向夏クラフトビール」です。
フルーティーで飲みやすい風味でした。
軽く一杯でほろ酔いになったところでそろそろ玉名なので降りる準備をします。
玉名では20分間停車し、その間にホーム上で特産品の販売などもありますが、私にとっては撮影タイムですねw
玉名駅に降り立ちました。
九州新幹線が出来てからは特急が止まらなくなって寂しくなった感もある玉名駅ですが、つかの間の賑わいを取り戻していますね。
外観も撮ります。
博多駅は暗くて撮りづらかったのですが、玉名駅は明るくて撮りやすいですね。
玉名を出ると次は熊本に停まります。
熊本は正規の停車駅であり、熊本までで降りる人、熊本から乗ってくる人もいます。
この区間は田原坂の戦いで有名な田原坂を通過しますが、車内放送でもその案内がされていました。
そのうち列車は熊本の市街地に入っていき、九州新幹線の高架が見えてくるともう熊本に到着します。
熊本では数分停車するようなのでホームに降りてみることにします。
熊本駅も在来線ホームで鹿児島中央行きが見られるのはレアですよね。
ちょうど隣にいたキハ40系と並べてみました。
815系もやってきました。
と、これくらいで車内に戻ります。
熊本駅は乗降のためだけの停車なのでホームでのおもてなしなどはありません。
熊本を発車すると引き続き鹿児島本線ですが、この区間は今は運休中ですが「かわせみ・やませみ」や「いさぶろう・しんぺい」などがあるので特急列車は「36ぷらす3」だけというわけではないですが、電車による特急という意味ではレアですよね。
線形もいい区間なので特急らしい走りをしてくれ、かつて乗車した「リレーつばめ」を思い出しながら過ごしました。
「リレーつばめ」だと新八代駅で九州新幹線に乗り換えでしたが、「36ぷらす」なら鹿児島中央までずっと乗っていられるので嬉しいです。
その新八代は通過して肥薩おれんじ鉄道との境界にあたる八代駅で運転停車がありました。
会社が変わるので乗務員交代でもするんでしょうかね。
肥薩おれんじ鉄道に入ると線路は単線になりカーブの多い区間になるため列車のスピードも落ちていきます。
八代~川内間の肥薩おれんじ鉄道に転換された区間は単線でカーブも多く特急でもあまりスピードを出せない区間であり、スピードアップの優先度が高いことから九州新幹線は新八代~鹿児島中央間を先行開業させることとなりましたが、鉄道において線形と車窓の良さは反比例の関係にあるのが常であり、鹿児島へ向かう旅人はスピードと引き換えに素晴らしい車窓を見る機会を失ったのでした。
私としても「36ぷらす3」への乗車を決めたのは肥薩おれんじ鉄道の区間を特急型車両で乗車したいというのが大きかったですからね。
なお、肥薩おれんじ鉄道に乗り入れるJR九州の列車はこの「36ぷらす3」を別にすると「ななつ星 in 九州」しかなく、それ以外は肥薩おれんじ鉄道のディーゼルカーしかありません。
ところで、肥薩おれんじ鉄道の列車はすべてディーゼルカーとなっていて、これは元々鹿児島本線は交流電化でしたが、交流用の電車は高価なため輸送量が少ない肥薩おれんじ鉄道では電化路線でありながらディーゼルカーを使用することとしました。
本来ならばこの時に電化設備を撤去していてもおかしくなかったのですが、貨物列車の乗り入れは継続することとなったため電化設備は維持されたのです。
このおかげで「36ぷらす3」が肥薩おれんじ鉄道を走ることができているわけですから良かったと言えますね。
ここで車内販売でアイスクリームを買いました。
熊本県玉東町の名産の「ハニーローザ」というスモモを使ったアイスクリームです。
中身はこんな感じ
少し酸味が効いていますが、ほのかな甘さもあって美味しかったです。
肥薩おれんじ鉄道に入ってしばらくして差し掛かる日奈久温泉駅で運転停車がありました。
単線なので列車交換のための運転停車が多くなるのは致し方ないですね。
そして、列車は日奈久温泉を過ぎたあたりから不知火海に沿って走行するようになり、この「36ぷらす3」のハイライトといえる区間に入ってきます。
車窓は動画で撮っていたため写真はありませんが、よろしければ動画でお楽しみ下さい。
ただ、このあたりから雨がちらつくようになりちょっと残念・・・まあ、天気ばかりは仕方ないですね。
水俣を過ぎると列車は県境を越えて鹿児島県へと入り、米ノ津駅に運転停車しました。
米ノ津は出水の1つ手前の駅であり、
出水駅に運転停車しました。
出水駅は九州新幹線の停車駅でもあり、肥薩おれんじ鉄道の中でも主要駅の1つに数えられる駅ですが、鶴が飛来する場所としても知られていて、駅には飛来した鶴の数を掲示する程でしたw
その後は折口駅でも運転停車をしてから、特別停車駅の牛ノ浜駅が近づきます。
ここは駅でのおもてなしもあるのでもちろん下車します。
可愛らしいイラストが出迎えてくれた牛ノ浜駅でしばらく停車します。
ホーム上では地元の方のおもてなしや物販もあって賑わいを見せています。
元々は特急も停まらない駅でしたが、ホームからも海が見える眺望の良い駅として知られていて、そのために「36ぷらす3」の特別停車駅に選ばれたのでしょう。
無人駅なので改札というものはなく駅前にも出られそうだったので出てみました。
アナウンスでも駅前からの海の景色をおすすめしていましたし、駅前に出るのは公式の楽しみ方と言えるでしょう。
顔出しパネルがありました。
このキャラクターは柑橘類がモチーフかな?w
駅と海の間には国道3号が通っています。
アナウンスでは安全のため横断しないようにと注意喚起がされていましたが、実際主要国道だけあって交通量も多く、しかも周辺に信号がほとんどない区間なのでかなりのペースで流れています。
国道3号に並行して南九州自動車道が整備されていますが、牛ノ浜駅周辺の区間はまだ開通しておらず都市間を移動する車両も国道3号を利用しているわけですね。
ちょうど南国交通のバスが通りました。
駅前にバス停も設けられており名前は「牛之浜」なんですが、駅とは表記が違っているのが面白いですね。
なお、地名としては牛之浜が正しいらしく、駅名に採用する時に簡略されたということのようです。
路線は阿久根と川内を結ぶものとなっていて、鉄道と並行する路線バスでもあるわけですね。
牛ノ浜駅に到着した時は晴れ間が広がっていて海も綺麗に見えました。
「36ぷらす3」を撮ろうとするもなかなか人の流れが途切れず・・・w
キロポストがありました。
この326kmは門司港からのものだと思いますが現在のキロ程は324.5kmとなっています。
この1.5kmの誤差は何なのかと言うと、1963年に博多駅が移転した際に0.5km短縮され、1999年に枝光~八幡間の経路変更で1km短縮されて、合計1.5kmの誤差が出たわけです。
つまりはこのキロポストは1963年以前に設置されたものということになりますね。
そういえば、あの障子風のブラインドを外から見るとこんな感じなんですね。
と、これくらいで車内に戻ります。
海も撮影も満喫できました。
ホームで買った鯛焼きを頬張りつつ旅を続けていきます。
しかもこれ、ただの鯛焼きではなくて「36ぷらす3」の焼印入りです。
ただ、スペースの都合なのか、36+3の答えである39になっていますがw
牛ノ浜を出ると続いて薩摩大川でも運転停車があって、更に上川内でも運転停車したら肥薩おれんじ鉄道から再びJR九州に変わる川内駅に到着します。
ここでももちろん運転停車がありますが、ドアは開かずにそのまま鹿児島本線へ入ります。
川内~鹿児島中央間も新幹線の並行在来線ではあるんですが、川内・串木野・市来・伊集院といった都市があって県庁所在地の鹿児島への往来でそこそこの需要があるということでJR九州のまま維持されることになったのです。
九州新幹線の開業からしばらくはホームライナーを特急格上げしたら「川内エクスプレス」という特急が鹿児島中央~川内間に設定されていましたが数年で廃止になり、以後は特急が走らない区間となっていました。
さて、ここで体験メニューが始まるそうです。
体験メニューは、各コースごとに設けられた車内イベントで、マルチカーを使って行われます。
今乗っている「赤の路」では「九州のお茶体験」という体験メニューが催されており煎茶を飲み比べたり、茶葉を選定してブレンドする体験ができるというもので、参加には事前の申し込みが必要で、乗車料金とは別に2500円が必要です。
私は今回は参加しませんでしたが、楽しそうなイベントですよね。
また乗る機会があれば今度は参加してみたいと思います。
ここまで来るとほとんど海が見える区間はなく山の中を進んだり市街地に出たりという感じですが、市来でまた運転停車がありました。
東市来から先は複線であり、木場茶屋から串木野の間も複線化されているのですが、それ以外は単線のままであり、こういう運転停車が発生します。
現役時代の「つばめ」はうまいこと運転停車が発生しないようなダイヤを組んでいたんですかね。
あとはもう鹿児島中央までひた走るだけです。
ただ、意外なのが県庁所在地に近づいているはずなのになかなか市街地が出てこないんですよね。
1駅手前の広木を通過するあたりでようやく市街地が見えてきてもうすぐ鹿児島中央駅に到着です。
隣には415系と787系「きりしま」がいました。
787系と415系とキハ40系というなかなか面白い並びです。
少し引くと「36ぷらす3」と415系と「きりしま」という並びも撮れました。
↑415系が発車していきました。
415系がいなくなったので787系同士の並びを・・・
同じ787系でもやっぱり違いますねw
↑「36ぷらす3」の引き上げです。
最後に「きりしま」とアミュプラザの観覧車を撮ったらホームを出ます。
ところで、「指宿のたまて箱」に空席があるというのは驚きましたね。
流石の人気列車もコロナ禍の影響は免れなかったということでしょうか。
前回乗ったときなんて、かなり苦労して指定券を確保した覚えがありますが・・・
さて、時刻は17時前にしてもう活動終了ですが、せっかく時間があるので・・・
名物黒豚のとんかつを頂きました。
お店は前回同様に川久というところで、地元では有名なところのようですね。
あとは早々にホテルに入ってのんびりしました。
まだ時間もあるので市電を乗り回すとか、天文館あたりをぶらつくとか考えましたが、実はこのまま2泊3日(この活動から通算すると3泊4日)の九州遠征が始まりますから、今日はのんびり過ごして体力を温存しようというわけですね。
なので、次回の記事はこの翌日の活動ということになるかと思います。
つづく