今回は福岡県北九州市にある「九州鉄道記念館」を訪問しましたのでそのレポートです。
なお、時系列としては「かわせみ・やませみ・いさぶろう・しんぺい」で門司港へ行った際の活動となります。
九州鉄道記念館とは
まず最初にこの記事の主題である九州鉄道記念館について解説してから本題に入っていきます。
九州鉄道記念館は2003年に開館した鉄道展示施設となっています。
運営は「九州鉄道記念館運営共同企業体」という組織が指定管理者となっており、施設の土地・建物や展示品はJR九州が所有するという形態になっています。
建物は初代九州鉄道の本社屋として1891年に建設されたもので後に鉄道院・鉄道省・国鉄と所有者が変わった後、九州鉄道記念館として転用されることとなりました。
展示車両はSLから電気機関車、国鉄時代の電車・客車など幅広くあり、その他に物品やジオラマ、運転シミュレーターなどもあって大宮や京都などに比べると小規模ではありますが、なかなか見応えのあるスポットだともいます。
入場料は大人300円、子供150円と安価で、しかもJR九州のICカード乗車券のSUGOCAを提示、もしくは決済に使用する、あるいは門司港駅から乗車できる乗車券を提示すると2割引となり、大人240円、子供120円になります。
私は偶然にも福岡に住んでいた頃に使っていたSUGOCAを持ってきていたので割引で入ることが出来ました。
といったところで本題のレポートに入っていきたいと思います。
いざ入場
前置きも済んだところで早速九州鉄道記念館に入りたいと思います。
こちらは平成筑豊鉄道が運営する北九州銀行レトロラインという観光鉄道の入り口です。
駅はJR門司港駅に隣接していますが、九州鉄道記念館駅という駅名を採用しています。
ところで、この駅名標ですが実は門司駅というのは門司港駅のかつての駅名であり、関門トンネルが開業するまではここ門司港駅こそが門司駅を名乗ってました。
しかし、関門トンネルが開業し、かつて大里駅と呼ばれた駅がその接続点となると門司の駅名はそちらに譲り、元々の門司駅は門司港駅と改名され現在に至ります。
隣の「だいり」というのは大里駅のことで、つまりは現在の門司駅のことです。
こちらが九州鉄道記念館の入口です。
既にSLの姿が見えますが、左手にある窓口で入場券を購入して入場となります。
一番手前で来場者を出迎えてくれるのはキューロクの愛称もある9600形蒸気機関車です。
普通SLといえば、C62とかD51のようにアルファベット+数字という形式名が多いと思いますが、9600形は数字だけの形式名となっているのは、アルファベット+数字の命名規則が確立する前に登場した形式だからで、1913年という日本の鉄道史の中でも最初の方に登場した形式となっており、日本各地で活躍した実績を持ちますが、よりパワーのある後継機が登場すると東海道本線などの幹線からは撤退したものの、それなりにパワーがある割に車重が比較的軽く路盤の弱い路線にも入線可能という長所を生かして戦後は九州や北海道の炭鉱を抱える路線の運炭列車を牽いていたようです。
このため九州に縁のある機関車ともいえ、こうして九州鉄道記念館の顔を務めているんでしょう。
あと、柵の支柱が800系新幹線のデザインになっていますね。
北陸へ行ったときにはE7系のバージョンもあったので、新幹線デザインは全国的な流行なのかもしれません。
それから、この線路みたいなイラストですが、窓口への行列を誘導するラインになっていて、しかもソーシャルディスタンスのための間隔を開ける目安にもなっていますね。
入場券を買っていよいよ入場です。
この日は空いているようですぐに入場できました。
顔出しパネルがありましたが、描かれているのは在りし日の寝台特急「はやぶさ」ですね。
今は東北・北海道新幹線の愛称となっている「はやぶさ」ですが、過去に何度か乗車し、よく撮影もしていた私としては「はやぶさ」は九州ブルトレのイメージが強いです。
SLはもう1両あり、C59形という機関車です。
こちらは戦後の幹線電化の進行と重すぎる車体が地方線区への転用を難しくしたため早々に余剰機が生じ、1966年までに大半が引退した経緯があります。
続いてはEF10形という電気機関車で、元々は幹線での貨物列車牽引用に作られた電気機関車でした。
その後、関門トンネル開業時にはこの関門トンネル区間に投入され、EF10形は専ら関門トンネル用の電気機関車という状況になりました。
しかし、九州管内の路線は交流電化されることとなると、直流専用のEF10形は関門トンネルからは撤退して全国各地に散っていったそうです。
このようにEF10形は関門トンネル開業時を象徴する機関車ということで九州鉄道記念館に展示するには相応しい機関車と言えますね。
また、2022年現在、九州鉄道記念館にあるこの35号機が唯一の保存機となっているようです。
ところで、この時代の電気機関車の特徴として、前後にデッキが付いているんですよね。
となると何か役割があるのかと思いたくなりますが、実はこれは「先輪」と呼ばれるカーブに上手く追従させるための車輪の上部のスペースが余ったから何か作っておこうという冗談のような理由で作られていたんだとか。
このEF10形は貨物列車用の機関車ということで牽引力重視であり、先輪は両側に1つずつでありデッキもそこまで大きくはないですが、旅客列車用の機関車では先輪が2つあるため更にデッキが大きくなるんだとか。
それなら先輪の部分も車体の一部にすればいいじゃないかと思えるかもしれませんが、先輪はカーブを走る時は左右に動くような構造になっているため、そうも行かないみたいです。
ただし、この先輪を設ける設計思想は蒸気機関車の流れを汲んだものであり、現代まで活躍するような世代の電気機関車では見られない特徴となっています。
続いてはED72形電気機関車です。
1961年に鹿児島本線の門司港~久留米間が電化された際に九州向けに投入された機関車で、これもEF10形と同様に九州鉄道記念館にあるこの1号機が唯一の保存機です。
この後継機と言えるED76形はかつて九州ブルトレの牽引機として広く活躍し、現在でも九州内の貨物列車の牽引機として現役ですが、それもEF510形の投入で置き換えられるみたいですから、九州で国鉄型の電気機関車が見られるのもあと僅かですね。
続いてはキハ07形気動車です。
この気動車は現在では一般的な液体式気動車ではなく、機械式気動車と呼ばれるタイプの気動車になります。
機械式というのは自動車で言うところのマニュアルトランスミッション(MT)と同様の変速機を用いる気動車で、当時の技術では複数の車両を1箇所の運転台から集中制御(=総括制御)することが出来なかったため2両以上連結して運行する場合は各車両に運転士が乗務して、警笛やブザーを合図に歩調を合わせて運転する必要があるなど、後に登場した液体式に比べると不便な部分がありました。
そのため現在は機械式気動車で現役のものはありませんが、このキハ07形は最後まで現役を続けた機械式気動車であり、最後はかつて大分・熊本両県に跨って走っていた宮原線で活躍していました。
なお、2021年10月に国の重要文化財に指定されました。
普段は中にも入れるようですが、コロナ対策なのか入れないようになっていました。
こちらは485系です。
一応改造されたジョイフルトレインなどに限られるとは言え現存する形式ではありますが、このボンネットスタイルのタイプは引退して久しいですよね。
トレインマークは「にちりん」となっていました。
方向幕は「にちりん」の門司港行きとなっていました。
門司港乗り入れはJR九州発足直後に行われていたようで、この他下関行きなんて列車まであったらしいですが、この下関行きに関してあるエピソードがあります。
それは、485系は交流も直流も走れる交直流電車なのですが、九州管内は関門トンネルを除いては交流電化ばかりだったこともあり、181系を改造して先頭車に組み込んだ485系というのが存在しており、この時にどうせ交流電化区間しか走らないからと直流へ切り替えるためのスイッチを取り付けていない編成があったのですが、この事をすっかり忘れて下関行きの「にちりん」に直流へ切り替えるためのスイッチが付いていない編成を充当してしまったために関門トンネル手前の小倉駅で交直切換の試験を行おうとしたらスイッチがないことが判明して運転を打ち切るというトラブルがありました。
この1件の後、当該編成にも直流へ切り替えるためのスイッチが追加されましたが、下関行き自体が6年間という短期間の運転に留まりました。
こういう博物館とかでないと見られない妻面も押さえてきましょう。
いきなり妻面からのご紹介になりましたが、こちらは583系です。
所属の表示です。
ミフというのは南福岡のことですが、南福岡にも配置されていた時期があるということですね。
583系は「月光型」と呼ばれることもありますが、「月光」の札が付いているのは分かっていますね。
方向幕ももちろん「月光」です。
「月光」は1967年に登場した寝台特急でご覧のように博多~新大阪間を結び、当時は山陽新幹線が無くて東海道新幹線のみだったため、東海道新幹線と連絡して九州と東京を結ぶ役割を担う列車でもありました。
車内も窓から除き見ることが出来ました。
583系は昼は座席、夜は寝台になることで昼夜を問わずに使用できる車両というコンセプトで登場した車両であり、この座席も寝台にもなります。
九州ブルトレの客車として活躍した14系客車です。
寝台特急「はやぶさ」は先程も書いたように何度か乗ったこともありましたし、よく撮影もした車両でしたが、今はもうこうして博物館でしか見られない車両になってしまったんですよね・・・
一応寝台特急としては「サンライズエクスプレス」が存続していますが、こういう開放式寝台というのはもう日本では体験できないものになってしまいましたね。
さて、この隣には「セラ1239」という貨車も展示されていたんですが、何故か写真を撮り忘れていたようです・・・
屋外の車両展示は以上となり、あとは屋内の展示となります。
こちらが展示施設となります。
前述のように旧九州鉄道の本社屋であり、建物自体も歴史のある貴重なものとなっています。
中に入るといきなり「チブ37」という客車が出迎えてくれます。
この客車は九州鉄道が発注したものですが、耶馬渓鉄道に譲渡され、最後は中津市内の飲食店が保存していたものを移設してここで展示されることとなったようです。
鉄道車両らしいアングルで撮ったら中にも入れるようなので内部を見てみましょう。
内部です。やたらと綺麗過ぎる気もするので当時からの内装ではないかもしれませんが、レトロな雰囲気は残っていますね。
チブ37の周辺には鉄道模型コンテストの作品が展示されてました。
こちらは香椎工業高校の作品です。海辺を走る幹線鉄道というイメージでしょうか。
こちらは大分東明高校の作品です。
大分の高校のようですし、国道10号と日豊本線をイメージしているんですかね。
篠栗北中学校の作品です。
西鉄バスがちょこんといますが、篠栗線の篠栗から先で山へ分け入るイメージかな?
こちらは大分雄城台高校の作品です。
現実の区間でどことは思い浮かびませんが、漁村を征く鉄道という感じでしょうか。
学校名の札が倒れていて不明ですが、姨捨駅をイメージしたジオラマのようです。
姨捨駅と言えばスイッチバックが有名ですが、このサイズだと全体を再現するのは厳しかったのかな?w
八代工業高校の作品です。
熊本城など熊本の名所を詰め込んだジオラマになっていますね。
鹿児島第一高校の作品です。
海辺で傾斜地というと竜ヶ水駅あたりを連想しますね。
水俣高校の作品です。
運動場や教室の中を線路が通るという常識に囚われない発想が面白いですね。
鹿児島修学館高校の作品です。
鹿児島城の御楼門という場所を再現しているようです。
東福岡高校の作品です。
説明されるまでもなく博多駅の駅舎を再現していますね。
あと、地下に2つの地下鉄が通っていますが、1つは空港線として、もう1つは延伸工事中の七隈線でしょうか。
鹿児島本線の駅名にもなっている九州産業大学の附属高校の作品です。
やっぱり九産大前駅付近をイメージしているんでしょうか。
こんな可愛らしいジオラマもあるんですね。
お気に入りの車両を置いてテーブルに飾るといいインテリアになりそうですね。
こちらはジオラマではありませんが、800系新幹線の模型が隅に追いやられていましたw
おそらく普段はこちらがメインで展示されているのが、ジオラマの展示で隅に追いやられてしまったのでしょう。
あと、子どもたちに大人気の運転シミュレーターもあります。
しかもシミュレーターに使われているこの811系は実物というのもすごいです。
ただ、こうして実物の811系がシミュレーターになっている理由はちょっと悲しい事情もありまして、2002年に鹿児島本線の海老津~遠賀川間で発生した追突事故の当該車両がこのシミュレーターになっている811系なんです。
事故原因は無閉塞運転という停止信号で長時間停止した場合に徐行しながら先行列車に追いつくまで進むことが出来る運転方法の不適切な実行であり、本来は例え進行信号が見えたとしてもそれは先行列車に対する現示なので徐行を続けなければならないところ、運転士の勘違いで加速してしまったところに不意に先行列車が現れ追突したというものでした。
幸いにして死者は出なかったものの134名が重軽傷を負う惨事となりました。
博多駅をイメージしたであろう駅には「あそぼーい!」がいました。
奥には「いさぶろう・しんぺい」もいました。
この訪問の移動には「かわせみ・やませみ・いさぶろう・しんぺい」に乗ってきたのですが、こうして模型でも見られるとは・・・
あと、奥には既に引退して久しい0系新幹線もいますね。
走行シーンを撮ろうと思ったらぶれちゃいましたw
やっぱり模型を撮るのは難しいです。
あと、こんなテーブルがありましたが、883系だったかにこんな感じのテーブルがあったような?
1階はこれくらいで次は2階へ上がります。
この法被みたいなのは「貨物驛夫」とありますが、貨物の積み下ろし係みたいな感じの人だったんですかね。
レールの展示もありましたが、子どもたちにとってはレールというのは縁の下の力持ちというより地味なようで足を止めるのは私のようなマニアだけでしたw
「はやぶさ」と475系(?)がいましたが脱線してるというw
石炭の塊のようです。
福岡には炭鉱が多かったということで展示しているのかな?
大隈駅の時刻表です。
大隈駅とは、上山田線にあった駅ですが、上山田線もろとも廃止になってしまいました。
これはCTCの表示版ですかね。
ただ、何故か横倒しの状態で展示されていたので写真はあえて回転させてません。
これは883系の座席ですね。
ヘッドレスト部分の形状がミッ◯ーマウスの耳に見えるとか見えないとかw
こっちは885系の座席ですかね?
革張りの高級感ある座席ですがグリーン車だけとかじゃなくて普通車でもこれだからすごいです。
記念きっぷの数々です。
九州に限らず全国各地のものが集まっているようですね。
古いきっぷも展示されていました。
この他にもたくさんありましたが数が多すぎるので割愛・・・
このようにクイズ形式にした展示は子供にも受けがよさそうですね。
この時は帰りの列車の時間もあって急いでいたので答えを見なかったのですが、おそらく高所作業用の安全帯かな?
これは電話機ですね。
電話線に直接つなげて掛けるタイプで、保線作業員とかが使ったのではないかと思います。
使用方法まで書かれていました。
あと回路図もありますが、そういえば一昔前の家電製品には必ず回路図が付属していましたよね。
修理するときの参考にするという意味なんでしょうけど、今どきの家電製品はハイテク化しすぎて素人が修理できる代物では無くなっていますからねぇ・・・
キハ07形が重要文化財になったことを伝える新聞記事が展示されていました。
鉄道車両で重要文化財になるのは珍しく、気動車としてはキハ07形が初の例になるようです。
将来的に蓄電池電車やハイブリッド気動車が普及していって現在の液体式気動車が無くなったとしたら、その最後の生き残りも重要文化財になったりするんでしょうか。
この時ちょうどキハ07形の重要文化財指定を記念した企画展がやっていたのですが、企画展は撮影禁止とのことだったのでここでの紹介は割愛します。
これにて屋内の展示は見終えたのですがまだ帰りません。
ところで、これは分岐器の展示ということでいいんでしょうか?w
ミニ列車の乗り場です。
子供向けのアトラクションという感じなんでしょうけど、これは入場料とは別料金となっています。
885系・883系・813系・787系・キハ72系の5種類があるようですが、885系と813系はこの日は運休でしたw
しかし、5種類のうち4種類は特急型なのに、813系だけ近郊型なのは一体・・・w
子供であえて813系に乗りたいと言う子がいたら将来有望ですねw
こちらが787系のミニ列車です。
運転士気分を味わえるアトラクションという感じのようですが、これは大人でも楽しいかもしれませんね。
↑動画も撮りました。
↑もう1つどうぞ
最後に見るべきはこのカットモデルです。
EF30形とED76形、そして485系の3車種の先頭部のみが展示されています。
これは現役時代の乗務員向けの注意なんでしょうけど、展示車両にも共通する注意事項ですね。
続いてはED76形ですが、長く見学されている方がいてなかなか空きそうになかったので中には入りませんでした。
まあ、どっちも電気機関車ですし、EF30形と似たようなものでしょうw
というわけで485系ですが、外から見てもわかるくらいの高運転台なので運転台がかなり高いですね。
乗り降りするだけでもちょっとした運動になりそうですw
運転台に座ってみました。
電気機関車よりは計器やレバーが少ないですが、それでもメカメカしさはありますね。
最後に敷地外から頭部を撮ったらこれにてレポートは終了となります。
ところで、485系は国鉄色ではなくてJR九州のオリジナルの「RED EXPRESS」なのは九州らしくていいですね。
というわけでレポートは以上となります。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
帰省中に他にも活動をしているので次も九州での活動の記事になると思います。
それでは!
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